累風庵閑日録

本と日常の徒然

『世界の名探偵コレクション10 エラリー・クイーン』 集英社文庫

●『世界の名探偵コレクション10 エラリー・クイーン』 集英社文庫 読了。

 シリーズの第七巻である。四編収録されている小説は、『エラリー・クイーンの冒険』と『エラリー・クイーンの新冒険』とにも収録されている。再読なので感想は省略。新訳版を買ってあるので、感想はそっちを読んだときに書くかもしれん。本書のキモは、ラジオドラマの脚本が二編収録されていることにある。

「世界一下劣な男」
 表面的には犯人が明白で解決済み同然の殺人事件。だが件の人物が犯人でないとすると、一転して不可能犯罪になる。犯人の属性を示す手がかりが、ラジオの聴取者に音声のみで伝わるよう書かれてあるのが読みどころ。

「ダイヤモンドを二倍にする男」
 探偵クイーンにとっては、厳重な監視の下でどうやってダイヤを持ち出したかがメインの謎である。誰が殺人者かは二の次のようだ。これも音声のみで情報が受け手に伝わることがポイントのひとつ。(伏せ字)のバリエーションである。真相はシンプルで秀逸だし、盗難の謎が結局は殺人の謎に密接に結びついている構成もいい感じ。