累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十八回 「愛の二重奏」

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十八回として、第八巻から若い男女の新婚生活を描く「愛の二重奏」を読んだ。何も起きなければさすがに小説にならないが、若夫婦が遭遇する出来事は波乱万丈とは程遠く、ちょっとした起伏程度である。金銭の悩み事、夫に過去の女性から届いた連絡、ご近所付き合い、旅行。総じて新婚生活の甘々なイチャコラ描写に終始する。お幸せなことでけっこうであるな。

 あれっと思った点がひとつある。対応を間違えたら家庭の破綻にもつながる可能性のあったトラブルが、妻の活躍で解決した。そのエピソードでの関連文書の扱いが、ホームズシリーズ「海軍条約文書事件」を連想するのだ。「愛の二重奏」は「海軍条約文書事件」の六年後の作品である。