●『殺人の代償』 H・ホイッティントン 扶桑社ミステリー 読了。
浮気にのめり込んだ男が、冷え切った関係の妻を殺そうと企む。言っちゃあ悪いがありきたりの設定である。中盤までは、語り手の男が妻の殺害計画を着々と実行に移す顛末が語られる。典型好きの私としてはこれはこれで面白く、平熱で読み進めた。だが、中盤で話が予想外の方向に転がってからは俄然気分が盛り上がってきた。なるほどこれが訳題の謂われなのか、という結末まで一気に突っ走る。巻を措く能わず、というほど夢中になってはいないが、ぐいぐい読める面白さがあった。これはちょっとしたものである。
ところで巻末解説によれば、この作品は今でいう「ノワール」の枠組みに入るという。ノワールってのは興味の対象外で、その手の本を積極的に買うつもりはない。二十年前の私が何を考えてこの本を買ったのか、今となっては霧の彼方に隠れて分からない。
●定期でお願いしている本が届いた。
『叫びの穴』 A・J・リース 論創社