●『緑のダイヤ』 A・モリスン 東京創元社 読了。
「世界大ロマン全集」第四巻である。表題作のほかに短編が二編収録されている。
アーサ・モリスン「緑のダイヤ」
競売でばらばらに売られた十一本のワイン。どうやらその中の一本に、インドの王族から盗まれた巨大な緑色ダイヤモンドが隠されてるらしい。事情を知った欲の皮の突っ張った奴らが、散逸したワインを求めて右往左往する物語である。ダイヤ争奪戦という枠組みを設け、偶然を多用して展開そのものの興味で読ませる、長編の快作であった。欲に振り回されてあたふたする人々の、人間臭い可笑しさも読みどころ。
ところで挟み込まれていた栞によれば、「緑のダイヤ」は古典推理小説ベストテンにランクされるそうだが、そういうものなのだろうか。本書が刊行された昭和三十一年時点での世評を知らないのでなんとも。もしかして営業トークだってことはないだろうか。
リチャード・デーヴィス「霧の夜」
内容を一言で表すなら身も蓋もない(伏字)ネタなのだが、そこに複数の捻りを盛り込み構成に意を用いて、悪くない仕上がりである。
マルセル・ベルジェ「ある殺人者の日記」
殺人者が発覚を恐れる様を主題にしたサスペンス。特にコメントは無し。
●書店に寄って本を買う。
『フランケンシュタインの工場』 E・D・ホック 国書刊行会
『サン=フォリアン教会の首吊り男』 G・シムノン ハヤカワ文庫