累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ランドルフ・メイスンと7つの罪』 M・D・ポースト 長崎出版

●『ランドルフ・メイスンと7つの罪』 M・D・ポースト 長崎出版 読了。

 法の抜け穴を探り、犯罪すれすれのところで依頼人の問題を解決する悪徳弁護士ランドルフ・メイスンのシリーズである。メイスンは、法律の条文を厳密に解釈することで問題を解決する。素人の私からすればあきらかに犯罪行為だと思える行動なのに、条文に従うなら有罪にはできないそうだ。

 まさかそんな法解釈が、などとロジックのアクロバットを駆使するような作品ではない。機知と策略とが展開されるコンゲーム小説でもない。メイスンの立案した計画がなぜ犯罪にならないか、条文に照らして説明される部分が、ミステリの種明かしに相当する。読者は、結末で提示される専門知識に恐れ入るしかない。その味わいは、一般に知られていない特殊な科学技術や薬品をトリックに使ったミステリと似たようなものであろう。

 その一方で、ちょっとした感動もある。この作品は、法が極めて厳正に運用されていることが前提である。物語世界の中では、住民感情や相手の社会的地位によって法の運用が恣意的に変えられることは決してないだろう。ある意味で、近代法治国家の理想像と言えるのではなかろうか。知らんけど。

●注文していた品物が届いた。皆進社さん発行の「『空気男爵』特製クリアファイル」である。本当なら先日買った『空気男爵』と一緒に注文すべきところ、うっかり忘れてしまっていた。あとから注文して、二度手間と送料とをかけさせてしまって恐縮です。