累風庵閑日録

本と日常の徒然

『奇妙な捕虜』 M・ホーム 論創社

●『奇妙な捕虜』 M・ホーム 論創社 読了。

 最初の舞台は第二次大戦末期の、イギリス軍の捕虜収容所である。題名にある奇妙な捕虜は、どこといって特徴が無いにもかかわらず不思議な存在感を発揮しているという。どうやら少しばかり精神を病んでいるらしい。護送途中に脱走したかと思えば再び収容所に舞い戻るなんて、おかしな行動も示す。

 件の捕虜の正体を巡る謎がすこぶる魅力的である。対独諜報活動を題材にした冒険小説の趣きもあるし、「捕虜」と彼の正体を探ろうとする英国諜報部員とが連れ立って、フランス各地を経巡るロードノベルの味わいもある。終盤には、某人物が実はキーパーソンだと分かって造形が一気に深みを増す意外さもある。これは面白かった。

 ところで、読み落としの可能性が高いのだが、読了しても疑問のままになっている点がふたつある。疑問の詳細はもちろん公開では書けない。どなたか読んだお方に訊いてみたい。