累風庵閑日録

本と日常の徒然

「赤い拇指紋」フリーマン

●午前中は野暮用。帰宅して昼寝してから、午後は本を読む。改造社の世界大衆文学全集第六十巻『ソーンダイク博士』から、収録の長編「赤い拇指紋」を読了。

 どうもフリーマン殿、捻りだとか意外性だとか、そういう方面には関心が薄いようで。その昔創元推理文庫で読んだ作品の再読だから、真相をぼんやり覚えているのを差っ引いたとしても、真相も真犯人も手がかりもあまりにみえみえである。

 だからといってつまらないわけではない。ソーンダイク博士は手がかりをひとつひとつ拾って、地道に堅実に真相に迫る。これぞフリーマン流の、地味な滋味をきちんと味わえる。また、脇役の造形も好ましい。無能で浅慮なラウレイ弁護士だとか、実験の手伝いをさせてくれないと言って拗ねる助手のポールトンだとか、事件よりも関係者の美人の方に意識が向かってしまう人間臭いジャーヴィスだとか。

 同時収録の残りの中・短編は、来月くらいに読む。

●書店に寄って本を買う。
『誰そ彼の殺人』 小松亜由美
 初の単行本である。めでたい。素晴らしい。

●お願いしていた本が届いた。
『おしゃべり時計の秘密』 F・グルーバー 論創社
『十一番目の災い』 N・ベロウ 論創社