累風庵閑日録

本と日常の徒然

『鬼の末裔』 三橋一夫 出版芸術社

●『鬼の末裔』 三橋一夫 出版芸術社 読了。

「不思議小説集成」の第二巻である。特に気に入ったのは、不気味さが際立つ以下の三編、「殺されるのは嫌だ」、「白鷺魔女」、「蛇恋」と、物事に執着してしまった人間の愚かさ哀れさ恐ろしさが際立つ「怪獣YUME」であった。なかでも「白鷺魔女」は、如来様が床の間の掛け軸から抜け出すというとぼけた冒頭が、終盤になって急激に怪奇小説になってゆく落差が上出来。

「沈黙の塔」は、インド北部、ネパール、ブータン辺りを舞台とする秘境冒険小説。こういう味が久しぶりなこともあって、ぐいぐい読めた。惜しいのは、五十ページしかなくてやや急いでる感があったこと。この内容でもうちょい書き込んだ三百ページくらいの作品が読みたい。

 一巻目で不思議小説の面白さを知り、二巻目の本書も天晴。三巻目も楽しみである。

●八月の人間ドックを予約した。気が早いようだが、鼻からの胃カメラを受診するためには早めの予約が必要なのだ。