累風庵閑日録

本と日常の徒然

『復讐鬼』 高木彬光 偕成社

●『復讐鬼』 高木彬光 偕成社 読了。

 扉には「大デューマ原作」とある。ダルタニヤン物語の第二部を、高木彬光が子供向けに分かりやすくリライトしたものである。大きめの活字で約三百ページの本なのだが、完訳は文庫版で三巻になるというから、かなり省略されているはずである。第一部を読んだことはないけれども、本書の記述によれば、第一部でダルタニヤンと三銃士とが稀代の悪女ミラディを成敗した。その息子モードントが親の仇として復讐を誓い、ダルタニヤン達を付け狙っているというのが、題名の謂れである。

 クロムウェル軍との戦いで窮地に立たされているチャールズ一世を救うべく、イギリスに渡って活躍するダルタニヤン一行。一方、クロムウェル配下となっているモードントは、彼らの計画の前に立ちふさがって妨害し、同時に命を狙ってくる。陽性の主人公と陰性邪悪な復讐鬼との対比が際立つ快作であった。子供向けなだけあってさすがに読みやすく、さくさくと物語が進む。基本的な物語が面白いのはデュマの功績だが、このスピード感は高木彬光の功績であろう。