●『証拠は眠る』 Ａ・フリーマン 原書房 読了。
今回二番目に感心したのが、殺人の手段である。なるほど、その手があったか、と思う。しかもその手段を採用したが故に必然的に証拠を残してしまう展開はお見事。今回最も感心したのが、犯行と犯人とを結びつける決定的な証拠の扱いである。個人的にはこの、証拠の意外さこそが最大の読みどころであった。
終盤までは犯人が誰なのかはもちろん謎だし、ソーンダイク博士が何をやっているのかも謎である。結末に至って、彼の行動は全て仮説と証拠集めと検証との積み重ねであることが明らかにされる。ひたすら緻密に堅実に犯罪を立証してゆくソーンダイク博士の活躍で、フリーマンに期待するものが十分に得られて満足である。
