累風庵閑日録

本と日常の徒然

『罠の怪』 志村有弘編 勉誠出版

●『罠の怪』 志村有弘編 勉誠出版 読了。

「べんせいライブラリー ミステリーセレクション」の一冊である。このアンソロジーシリーズには、今ではほとんど忘れられた昔の娯楽色の強い探偵小説がちょいちょい収録されていて、珍品を読む面白さがある。

 大下宇陀児「手錠」は、奇妙な状況がもたらすサスペンスと、強盗殺人犯臼井十吉の造形とで読ませる。藤波浩「失われた夜の罠」は産業スパイの物語だが、突き抜けた馬鹿馬鹿しさが楽しい。これぞまさしく珍品である。ふざけているのではなく大真面目に書いているらしいのが、味わいになっている。

 奥田野月「罠の罠」は、さながら明智小五郎多羅尾伴内かという、パロディ寸前の探偵活劇。徳田探偵が悪の組織狼団に闘いを挑む。探偵も狼団の首領も、どちらも変装の名人だてえから、それだけでもう後の展開が見えてこようというものだ。メインのネタは全然意外でない「意外な真相」で、いっそ微笑ましい。それ以外にもいくつか小ネタが仕込まれていて、なかなか愉快な作品であった。

 鵠沼二郎「陰花の罠」は、こんなところでホームズの(伏字)ネタに出くわすとは、という意外さがあった。

●東京文フリで、出店者殿のお手伝いとして売り子をしてきた。合間にいろいろ本を買ったし、いただいた本もある。ありがとうございますありがとうございます。書名を羅列したいところだけども、数が多いので省略。

●文フリ終了後に関係者で打ち上げ。皆さんお疲れなので早めにお開きになったけれど、今後の横溝ファン活動の計画と予定とについて、いろいろ実のある話ができた。やはり直接顔を合わせて会話すると、行き交う情報の密度が違う。今月、来月、三月、五月。それ以外でも全く予定が未定の計画がいくつかある。盛んなことで結構である。