●『トム・ソーヤーの探偵・探検』 M・トゥエイン 新潮文庫 読了。
「トム・ソーヤーの探偵」
予想外の秀作。あっぱれ定石通りのミステリに仕上がっている。トムはご立派な名探偵ぶりを発揮しているし、意外な真相もきっちり盛り込まれている。サスペンスも上々。もっとも、それらの要素のどれもが突出したものではなく、いわばよくある話ではあるが。
ここで大事なのは、よくある話が欠点ではないということ。突き抜けたネタよりも、全然意外でない「意外な真相」の方が、いい歳して読むジュブナイルミステリには望ましい。型通りであることが滋味になっているのだ。
「トム・ソーヤーの探検」
これもまた予想外の秀作。マッドサイエンティストが発明した気球に拉致されて、アメリカ大陸を飛び立ったトム一行。ほら吹き男爵と落語とを合わせたような奇矯な物語で、壮大な馬鹿馬鹿しさが漂う。交わされる会話もどこかずれていて楽しい。ご隠居と八っつあん熊さんの会話のような。