累風庵閑日録

本と日常の徒然

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

今月の総括

●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十一冊まあ順調と言える。 ●某所から、資料複写代金の通知が届く。ここは前金制なので、明日にでも現金書留を送ることにする。

『銀幕ミステリー倶楽部』 新保博久編 光文社文庫

●『銀幕ミステリー倶楽部』 新保博久編 光文社文庫 読了。 コメントを付けたい作品は多くない。ちと低調であった。 横溝正史「あ・てる・てえる・ふいるむ」は、何気ない会話にふいと入り込んだ悪魔、という着想がいい。霞流一「首切り監督」は、基本となる…

『金庫と老婆』 P・クェンティン ポケミス

●『金庫と老婆』 P・クェンティン ポケミス 読了。 表題作は傑作と言っていい。文字通り金庫と老婆とを題材にして、特上のサスペンスを紡いでみせる。内容について詳しいことは書かない。他に気に入った作品は、このネタこの内容なら十分長編にもなり得る「…

『忍法創世記』 山田風太郎 出版芸術社

●『忍法創世記』 山田風太郎 出版芸術社 読了。 「忍法弓張月!」 「あふ!」 わははははは。いやあ、めちゃめちゃ面白いぞ。 ひどく作り物めいた作品、と書くとネガティブなニュアンスを帯びそうだがそうではない。作中の全ての要素、すなわち人物造形も彼…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第四回

●書店に寄って本を買う。 『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』 T・ゴス ハヤカワSFシリーズハヤカワSFシリーズを買うのは初めてだ。 ●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第四回をやる。今回は第一巻の収録作から「恐怖…

『藤雪夫探偵小説選II』 論創社

●昨日の読書会の文字起こしと整理とで大分時間がかかってしまった。 ●『藤雪夫探偵小説選II』 論創社 読了。 やはりこの作家の、地道、素朴、堅実な作風は好みである。ただし第一巻でも感じたことだが、時折挿入される情景描写が冗長に思えることがなくは…

第二回オンライン横溝読書会「不死蝶」

●第二回オンライン横溝読書会を開催した。課題図書は「不死蝶」。雑誌『平凡』で、昭和二十八年六月から連載された作品である。参加者は私を含めて六名。そのうちお一人が初参加であった。 ●会ではネタバレ全開だったのだが、このレポートでは当然その辺りは…

『悲しい毒』 B・コッブ 論創社

●『悲しい毒』 B・コッブ 論創社 読了。 おお、これこれ、ってなもんである。これぞミステリの面白さ。十個のカクテルグラスがその時どこにあったのか。バーマン警部補はグラスひとつひとつについて丹念に聞き取り調査を重ねてゆく。毒の入ったグラスが明ら…

『不死蝶』 横溝正史 角川文庫

●『不死蝶』 横溝正史 角川文庫 読了。 前回読んだのは十二年前。今週末にオンライン横溝読書会が開催され、表題作が課題図書であることから再読した。感想はレポートと兼ねて読書会後に書く。 せっかく手に取った本だから、ついでに同時収録の「人面瘡」も…

『香住春吾探偵小説選I』 論創社

●『香住春吾探偵小説選I』 論創社 読了。 基本的にユーモアミステリを書く作家なのだという。「近眼奇談」は落語の「三年目」に、「金田君の悲劇」は同じく落語の「粗忽長屋」に通じるような、とぼけた可笑しさがある。「推理ごっこ」はほとんど小噺だが、…

『約束』 F・デュレンマット ハヤカワ文庫

●『約束』 F・デュレンマット ハヤカワ文庫 読了。 のっけから、廃人となった元警部が登場する。語り手の、これも引退した元警官によると彼は天才的な名警部だったらしい。それがどうしてこんな有様になったのか。最初から破局が明示されている訳だ。 かの…

『別冊・幻影城 NO.2 日影丈吉』 幻影社

●『別冊・幻影城 NO.2 日影丈吉』 幻影社 読了。 「真赤な子犬」 読者は真相を知っている序盤の事件。そこに奇妙な異物が混入する。それが真赤な子犬である。子犬が物語全体でどういう役割を果たすのかはっきりしないまま、事件は次第に捻れてゆく。 中…

『蜘蛛と蠅』 F・W・クロフツ 創元推理文庫

●『蜘蛛と蠅』 F・W・クロフツ 創元推理文庫 読了。 今回のフレンチは少々趣が違うようだ。なにしろ初手は私的な立場で、事件が起きた地元警察と対立する見解でもって捜査に当たるのである。結末部分でも(伏字)かったし。 地元警察はトニー青年を逮捕す…

『竹村直伸探偵小説選I』 論創社

●『竹村直伸探偵小説選I』 論創社 読了。 冒頭の謎の魅力も、展開の捻りも、意外な真相も、それぞれ高い水準にある作品が揃っている。作品の特徴は、しばしば事件の謎ではなく人間の謎を扱っていること。これがまた秀逸である。 たとえば「霧の中で」の、見…