累風庵閑日録

本と日常の徒然

『第八の日』 E・クイーン ハヤカワ文庫

●『第八の日』 E・クイーン ハヤカワ文庫 読了。

 言葉に対する執拗なまでのこだわりが、いかにもクイーンらしい。そのこだわりは書かれた言葉にも話された言葉にも及ぶ。書かれた言葉については、終盤のとあるネタの放つ皮肉が強烈。話された言葉については、(伏字)なんて設定が秀逸。切れ味鋭い短編の題材にもなりそうな。

 人々の証言や残された物証を基に、真相に向かって着実に論証を積み重ねてゆく探偵クイーンの姿勢は、これぞ作家クイーンの持ち味である。公開では書けないある要素も、いかにもクイーンである。いわゆる論理のアクロバットの妙味には乏しくて、その点がちょいと残念だが大したことではない。上記三点の要素をきっちり味わえて、満足度は高い。

●注文していた本が届いた。
『海老足男との対決』 V・ウィリアムズ ヒラヤマ探偵文庫