累風庵閑日録

本と日常の徒然

『コールド・バック』 H・コンウェイ 論創社

●『コールド・バック』 H・コンウェイ 論創社 読了。

 基本はメロドラマ。精神に変調を来している妻の、過去の真実を探るために主人公が旅に出る。十九世紀の小説にしては文章が簡潔で読みやすい。おかげで主人公の感情の起伏が素直に伝わってくる。この点は大いに助かった。古い小説にありがちなくだくだしい記述を読まされると、まどろっこしい気が先に立つのだ。

 重要な情報を主人公と読者とが得る場面を思い切った展開にしていて、この辺に作家の技量を感じさせる。情報を得るための調査にページを費やすと、ミステリの面白さは出るかもしれないが、娯楽小説としては遅滞してしまうだろう。巻末の訳者あとがきによれば、当時の社会情勢や大衆の好みをいろいろ取り入れているそうで、その点も上手さだと思う。

●書店に出かけて本を買う。
『ミステリマガジン 7月号』 早川書房
『建築知識 6月号』 エクスナレッジ

 今月の木魚庵氏の連載は、「獄門島」が題材である。