ゴキゲンな伝奇小説であった。内容は分かりやすく展開が速くて、サクサク読める。おまけに文字が大きいこともあって、予定より早い読了となった。大勢の人々がかつ出会いかつ別れ、あるいは敵対しあるいは手を結び、荒れ狂う運命の波濤に翻弄される。江戸の街に、大名屋敷に、奉行所に、陰謀奸計が渦巻く。怪剣士が暗躍し、怪盗が闇夜を走る。
物語が進むにつれて、次第に明らかになってゆく大陰謀。その鍵となる品物を巡って、複数の陣営が闘争を重ねる。そこに偶然巻き込まれたのが主人公早乙女主計である。ところがこの主計殿、あまり精彩がない。むしろ脇役の遠山金四郎だとか怪盗まぼろし小僧だとか、敵役の鳥居耀蔵なんかの方が活き活きしている。結局のところ、作品の主役は波乱万丈なストーリーそのものなのであろう。
●今月の総括。
買った本:十二冊
読んだ本:十三冊
文フリがあった影響で購入数が膨らんだが、一方で読む方も快調であった。