累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ベヴァリー・クラブ』 P・アントニー 原書房

●『ベヴァリー・クラブ』 P・アントニー 原書房 読了。

 事件もその後の展開も、割とありがちなものであった。発見された直後に消え失せ、再び現れた死体。多すぎる手掛かりと多すぎる容疑者。誰もが動機を持ち、誰もが機会を持っていた。

 だが、けっして凡作ではない。真相と首謀者の造形ともになかなかに強烈。多くの要素がすっきりと、ではなく、歪んだ形のまま歪んだ鋳型にすっぽりとはまり込むような結末がお見事であった。上出来である。