今度の週末に、ミステリ専門劇団回路Rさんの朗読劇「黄金仮面」が上演される。そのための予習として、たぶん三度目くらいの再読。冒頭からいきなりフルスピードで突っ走る展開が快調である。すっかり忘れていたサイドストーリーが盛り込まれていて、その存在自体がちょいと意外で楽しい。黄金仮面の正体が、少々意地悪な造形にされているのも興味深い。読み進めていくとどうも他愛なくてミエミエで、だんだん飽きてきたけれども、全体は実に読みやすく、これぞまさしく肩の凝らない読物というやつである。
個人的に最も注目したポイントは、とある屋敷に仕掛けられたトリックの元ネタがファントマだという記述である。同様のネタが横溝正史の作品にも登場する。つまり、横溝の元ネタはファントマなのか、という課題につながるわけだ。いつか風濤社の『ファントマ』か『久生十蘭全集11』に収録されているファントマを読んでみなければなるまい。