累風庵閑日録

本と日常の徒然

『十蘭万華鏡』 久生十蘭 河出文庫

●『十蘭万華鏡』 久生十蘭 河出文庫 読了。

 流麗な文章が、読んでいて気持ちいい。「大竜巻」の、竜巻内部に蠢く雲の迫力。「天国の登り口」の、落下傘降下の緊張感。「一の倉沢」の、岩登りのぎりぎりのスリル。そういった、もちろん経験したことがない事柄なのに伝わってくる臨場感の凄まじさよ。

 個人的ベストは「雲の小径」で、話の方向が見え始めてからの指数関数的な盛り上がりが素晴らしい恐怖潭であった。次点は「花合わせ」で、おぞましい世相に流される主人公の人間らしい弱さと、ヤジロベエのように揺れ動く危うさに、何やら迫ってくるものがある。

●お願いしていた本が二方面から届いた。
『楽員に弔花を』 N・マーシュ 論創社
『あゝ華族様だよと私は嘘を吐くのであった 渡邊温選集』 YOUCHAN編・絵 盛林堂ミステリアス文庫

●書店に出かけて本を買う。
江戸川乱歩座談』 中公文庫
『建築知識 10月号』 エクスナレッジ

 今回の木魚庵氏のネタは「迷路荘の殺人」だ。

●ミステリ専門劇団回路Rさんの朗読劇「黄金仮面」を鑑賞してきた。あの原作を一時間少々に収める脚本のアレンジが素晴らしい。文字では得られない舞台ならではの演出が素晴らしい。そしてなんといっても、名探偵明智小五郎の登場が素晴らしい。楽しませてもらいました。