累風庵閑日録

本と日常の徒然

『七人の女探偵』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス

●『七人の女探偵』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス 読了。 「七人の名探偵シリーズ」の第三巻である。残念ながらコメントを付けたい作品は多くない。小泉喜美子「握りしめたオレンジの謎」は、ダイイングメッセージそのものよりも関連情報の扱いにちょっと感…

『五枚目のエース』 S・パーマー 原書房

●『五枚目のエース』 S・パーマー 原書房 読了。 殺人犯の死刑が、近いうちに執行される予定である。だが、どうやら彼は冤罪で、他に真犯人がいるらしい。探偵役のヒルデガード・ウィザーズは、刑の執行前に真犯人を見つけるべく奔走する。とまあ、典型的な…

『赤い密室』 鮎川哲也 出版芸術社

●『赤い密室』 鮎川哲也 出版芸術社 読了。 名探偵星影龍三全集の第一巻である。「消えた奇術師」と「妖塔記」とは、悪くはないのだがなにしろ二十ページしかなく、どうにもあっけない。やはりこういうタイプのミステリは、ある程度描写と情報とを積み重ねて…

今月の総括

●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十一冊 月末に開催したイベントの準備に注力したので、後半あまり本を読めなかった。

『服用禁止』 A・バークリー 原書房

●『服用禁止』 A・バークリー 原書房 読了。 人物描写に力を注いだバークリーらしく、好悪両面で個性的な人々が活き活きと描かれている。たとえば体の不調と泣き言とを並べたてるばかりの役立たずアンジェラ。知的で冷静で有能なローナ。周囲の思惑や迷惑を…

「夢をまねく手」

●昨日はXのスペース企画「『金田一耕助の冒険』をネタバレで語ろう」を開催した。他のスピーカーさんのおかげで密度の高い語り合いができた。ありがたいことです。 ●本を買う。『マット・スカダー わが探偵人生』 L・ブロック 二見書房 ●注文していた本が届…

『アガサ・クリスティー99の謎』 早川書房編集部編 クリスティー文庫

●『アガサ・クリスティー99の謎』 早川書房編集部編 クリスティー文庫 読了。 クリスティー関連の豆知識を並べた本。昔流行った、いわゆる謎本の体裁である。採り上げる対象はクリスティー本人、シリーズ探偵、各作品、関連映像作品等々に至るまで幅広い。…

『白衣の女』 W・コリンズ 岩波文庫

●『白衣の女』 W・コリンズ 岩波文庫 読了。 真に愛する人に巡り合ったヒロインのローラ。だが時すでに遅し。彼女は、当時の社会規範にがんじがらめになって望まぬ結婚をしてしまう。夫となったパーシヴァル卿は、求婚していた頃は優しく礼儀正しい紳士であ…

みすてりい

●本を買う。『みすてりい』 城昌幸 創元推理文庫『のすたるじあ』 城昌幸 創元推理文庫『建築知識 11月号』 エクスナレッジ 木魚庵氏の今回のお題は「女王蜂」だ。 ●今読んでいる長大な小説は、下巻の後半まで進んだ。予想以上に面白くてぐいぐい読める。…

更新一時停止

●上中下巻トータル千百ページの小説を、今日から読み始めた。私のペースだと、読了までに一週間はかかる。そのため、この読書日記の更新を当面停止する。

『七人の警部』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス

●『七人の警部』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス 読了。 「七人の名探偵シリーズ」の第二巻である。大庭武年「牧師服の男」は、戦前にこれだけ堅実着実に捜査の模様を描く作品も珍しく、それだけでもう面白く読める。真相も(伏字)ネタを使っていてお見事。…

『アヴリルの相続人』 P・ヴェリー 論創社

●『アヴリルの相続人』 P・ヴェリー 論創社 読了。 多重構造を持つ宝探し物語である。富豪ギヨーム・アヴリルの莫大な遺産がどこかに隠されている。その隠し場所を記した遺言書がどこかに隠されている。遺言書の隠し場所はレコードに吹き込まれているが、破…

『妖怪紳士』 都筑道夫 本の雑誌社

●『妖怪紳士』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。 少年小説コレクションの第四巻である。表題作「妖怪紳士」は、ちょっとした快作。妖怪牢の番人だった主人公が、脱獄した妖怪達と闘う怪奇アクションである。展開がとにかく速いし、様々な妖怪が登場して暴れまわる…

『ネロ・ウルフ対FBI』 R・スタウト 光文社文庫

●『ネロ・ウルフ対FBI』 R・スタウト 光文社文庫 読了。 歳とともに小説の好みが変わってきている。A卿は何時何分に書斎にいて、B嬢はその時寝室にいたはずで、台所にいた秘書Cの発言によると……なんてのをごりごりに追及していくミステリが、だんだんし…

『棄ててきた女』 若島正編 早川書房

●週の後半から土曜にかけてやけに忙しく、読書時間が確保できなかった。三百ページの本を読むのに四日もかかってしまった。 ●『棄ててきた女』 若島正編 早川書房 読了。 異色作家短編集第十九巻、「アンソロジー/イギリス篇」である。どうもピンとこない作…

『楽員に弔花を』 N・マーシュ 論創社

●『楽員に弔花を』 N・マーシュ 論創社 読了。 尋問とディスカッションとを積み重ねて、じわじわと状況が明らかになってゆく過程が、これぞまさしくミステリの面白さである。それまで見えていた絵図面がくるっとひっくり返る真相も、それにまつわる(伏字)…

今月の総括

●今月の総括。買った本:二十六冊読んだ本:十二冊 今月は、できるだけ本を買わないという制約を取っ払った。それでも、毎月何十冊と買う本好きの方々に比べたら買ってないのと同じである。買いたいだけ本を買ったおかげか、読む方も快調であった。

『金田一耕助の冒険』 横溝正史 角川文庫

●『金田一耕助の冒険』 横溝正史 角川文庫 読了。 メモを取りながら、四日間かけてゆっくりと読んだ。そうやって取り組むといろいろ気付く点がある。「霧の中の女」の根底にあるのは、それ以前に書かれた金田一ものの長編「(伏字)」ではないのか。「鏡の中…

「『金田一耕助の冒険』をネタバレで語ろう」

●来月末に、Xのスペース機能を使った配信企画を予定している。題して「『金田一耕助の冒険』をネタバレで語ろう」だ。四人の担当者が角川文庫からそれぞれ一編を選び、ネタバレで語る企画である。そのための準備として、今日から件の課題図書を読み始めた。…

『葵の影法師』 東映京都撮影所

●『葵の影法師』 東映京都撮影所 読了。 山田風太郎「江戸忍法帖」を原作とした脚本である。「準備用」としてある。前将軍のご落胤で主人公の足柄悠太郎と、権力の座を求めて陰謀を企む柳沢吉保との闘争を描く。吉保が差し向けた、奇怪な忍法を使う甲賀九人…

『ハートの4』 E・クイーン ハヤカワ文庫

●『ハートの4』 E・クイーン ハヤカワ文庫 読了。 メロドラマ色が強く、中盤までなかなか物語に乗れなかった。殺人が起きて捜査が進められるようになるとじわじわと面白くなるが、なおもちょちょい挟まれる惚れたハレたのせいで冷静になる。とはいうものの…

『十蘭万華鏡』 久生十蘭 河出文庫

●『十蘭万華鏡』 久生十蘭 河出文庫 読了。 流麗な文章が、読んでいて気持ちいい。「大竜巻」の、竜巻内部に蠢く雲の迫力。「天国の登り口」の、落下傘降下の緊張感。「一の倉沢」の、岩登りのぎりぎりのスリル。そういった、もちろん経験したことがない事柄なのに…

『英文学の地下水脈』 小森健太朗 東京創元社

●『英文学の地下水脈』 小森健太朗 東京創元社 読了。 ハワード・ヘイクラフトらの評論にある、ドイル以前の米英ミステリ史の見取り図と、黒岩涙香が翻案の原作とした作品群から見えてくる鳥観図とでは、大きな乖離がある。本書は、今ではほとんど忘れられミ…

『黄金仮面』 江戸川乱歩 創元推理文庫

●『黄金仮面』 江戸川乱歩 創元推理文庫 読了。 今度の週末に、ミステリ専門劇団回路Rさんの朗読劇「黄金仮面」が上演される。そのための予習として、たぶん三度目くらいの再読。冒頭からいきなりフルスピードで突っ走る展開が快調である。すっかり忘れてい…

『死体が歩いた』 R・ウィンザー ポケミス

●『死体が歩いた』 R・ウィンザー ポケミス 読了 濃霧の中で、車が立木に衝突する事故が発生した。ドライバーの死体は現場から離れた池の中で発見されたが、死因は溺死ではなく衝突のショックによる即死と判明した。つまり、意識がもうろうとしたドライバー…

『乱歩殺人事件-「悪霊」ふたたび』 芦辺拓・江戸川乱歩 角川書店

●『乱歩殺人事件-「悪霊」ふたたび』 芦辺拓・江戸川乱歩 角川書店 読了。 乱歩の「悪霊」を精読して細かな記述まで拾い上げ、そこを土台として自由な想像と大量の創造とを積み重ね、錯綜しつつも一貫した物語を作り上げている。大変な力業である。さらにそ…

『エッジウェア卿の死』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『エッジウェア卿の死』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 エッジウェア卿が殺される直前、別居中の妻ジェーンが屋敷を訪れ、黙って立ち去っていた。動機の強さもあって、彼女が犯人であることはあまりにも明白。というのが、一番最初に提示される…

『七人の刑事』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス

●『七人の刑事』 山前譲編 廣済堂ブルーブックス 読了。 「七人の名探偵シリーズ」の第一巻である。島田一男「部長刑事物語」や藤原審爾「復讐の論理」は、普段馴染みのないスタイルの新鮮さがあってつまらなくはなかったが、それ以上のコメントは無し。森村…

『リトモア少年誘拐』 H・ウェイド 創元推理文庫

●『リトモア少年誘拐』 H・ウェイド 創元推理文庫 読了。 おっそろしく地味な作品である。誘拐サスペンスから始まって、やがて重点は犯人を追及する警察の捜査へと移ってゆく。主人公格の人物としてヴァイン主任警部がいるけれども、ずば抜けた名探偵ぶりを…

『パニック・パーティー』 A・バークリー 原書房

●『パニック・パーティー』 A・バークリー 原書房 読了。 クルーズ船のトラブルによって、絶海の孤島に置き去りにされた十五人の男女。船が戻ってくるのは二週間後。水や食料は豊富だが、無線機はない。事故のようだが実際は、裏にクルーズ主催者のとある企…