●『死が二人を別つまで』 鮎川哲也 角川文庫 読了。
鮎川哲也名作選の第八巻である。伏線とロジックの面白さを主眼とする作品は、あまり短いとどうもあっけなさすぎるようだ。
「汚点」
過去に仙台で五年暮らしたので、メインのネタには早い段階で気付いた。
「霧笛」
犯人に直結する、シンプルでさりげない手がかりが秀逸。しかも指摘されてみれば、こんなにあからさまに書いてあるのに、と思えてくる。
「プラスチックの塔」
(伏字)が取って付けたよう、という違和感はあるが、些細なもので。遺留品の解釈を巡って地道に堅実に捜査を進める展開は、私好みである。
「赤い靴下」
動機が異様、というより犯人の人間性が異様。犯人が陥落する決め手がお見事。
表題作「死が二人を別つまで」が収録作中のベスト。じっくり情報を積み重ねてゆくタイプが多い鮎哲作品には珍しく、切れ味の鋭さが光る。