累風庵閑日録

本と日常の徒然

『シャーロック・ホームズの光と影』 G・ノウン 東京図書

●『シャーロック・ホームズの光と影』 G・ノウン 東京図書 読了。

 「緋色の研究」を初めて出版したワード・ロック社が、刊行百年を記念して出した本だそうな。内容は三部構成で、ドイルの伝記、ホームズの人となり、実際のビクトリア朝社会の様子、となっている。特筆すべきもののない、まあ、よくあるホームズ本。ところがこれが、妙に面白いのだ。爆発的なホームズ人気に対するドイルの戸惑いや、欠点を多分に持つ奇人ヒーローの造形など、結局のところ題材そのものがすこぶる面白いのである。おかげでホームズシリーズを再読したくなった。

 そして重要な点が一つ。ホームズ譚をあくまでもフィクションとして扱う姿勢に、好感が持てる。一部のシャーロキアンの、現実とフィクションとの境界を曖昧にする遊び方には、共感できない。