●『少女ミステリー倶楽部』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。
悪く言えば湿っぽい、穏便に表現するなら叙情味の勝った作品は、私の好みではない。そういった作品が多くて、残念ながら打率は高くない。有馬頼義「白い道の少女」は、親を間違った幼児誘拐犯の謎と、結末の(伏字)が、これはこれで悪くない。
乱歩のデビュー前の叙事詩「オルレアンの少女」は、巻末解説にある通り「読んで正直おもしろいというほどでもない」が、まずは読めるということに価値のある珍品。
アンソロジーのマスターピースになるような秀作・傑作は、何度読んでも面白い。本書で該当するのは、丘美丈二郎「汽車を招く少女」と角田喜久雄「笛吹けば人が死ぬ」である。うむ、面白い。
個人的には、本書の一番の注目ポイントは巻末解説にある。多数のアンソロジーを編纂した鮎川哲也は、収録する作品に対して「みずから推敲の筆も執った」のだそうな。つまりは文章をいじっているということか。初めて知った。
実例として丘美丈二郎の作品が挙げられているが、論創社の『探偵小説選』に収録のバージョンとの比較は、面倒くさいからやらない。これがもし横溝正史の作品だったら、逐語的な比較をしてみたくなるのだが。