●『川野京輔探偵小説選I』 論創社 読了。
艶笑小咄に濃い目のグロテスク風味を利かせて探偵小説の器に盛りました、といった塩梅の作品集。残念ながら私の好みではなかった。ただ、文章の読みやすさは評価したい。偉そうで申し訳ないけれども。さっと読めてさっと忘れてしまえる軽さが身上である。
短編連作シリーズ「難波京介の事件簿」は猟奇事件を扱って、冒頭の謎が魅力的な作品もいくつかあるにはあるが、それぞれ六ページほどでは物語を膨らませようもない。
比較的ミステリ味が濃かった中編の「呪われた美貌」を一番面白く読んだが、それにしたってこちらの評価のハードルをちょいと下げて臨まないといけない。第二巻が本格物を中心とした構成だというから、そちらに期待しておく。
ところで巻末解題の末尾には、第三巻の刊行が決定したとある。来春刊行予定だそうで、ここで言う来春とは二千十九年のことである。実際は今に至るも第三巻は出ていない。頓挫したのは「決定」の方か、それとも「予定」の方なのだろうか。
●直販でお願いしている本が届いた。
『<羽ペン>倶楽部の奇妙な事件』 A・R・ロング 論創社