累風庵閑日録

本と日常の徒然

『蛇は嗤う』 S・ギルラス 長崎出版

●『蛇は嗤う』 S・ギルラス 長崎出版 読了。

 舞台は北アフリカのタンジール。馴染みのない土地の魅力はあるが、中盤までの展開は割と平板。ところが事件が起きてからは快調に読める。伏線も意外性の演出も上々だし、いろいろな要素が納まるべきところに収まった真相も満足である。

 個人的な好みとしては、事件のキーとして(伏字)を使っている点が特に気に入った。読者を間違った方向に誘導するのに、人物造形がきちんと有効に働いている点も評価したい。そつなく書かれた秀作であった。