●『神変稲妻車』 横溝正史 八千代書院 読了。
某同人誌に向けた原稿のために、約六年ぶりに再読。今回はせっかくなので、以前買って積ん読だった単行本を手に取った。まずは前回読んだときの日記から、感想部分を再録しておく。
のっけからフルスピードの活劇である。白鷺弦之丞蓬莱閣のチャンバラ、幻術師雁阿弥の使う妖術折鶴呪縛、弦之丞の双生児の妹小百合の登場、怪囚人稲妻丹佐の逃亡。これだけの要素が、開巻わずか二十ページに詰め込まれ、それ以降も同様の密度で突拍子もない物語が展開される。刹那的な見せ場がひたすら続くばかりで、メインとなる物語の軸がなかなか見えてこない。小説としての構成は心細いけれども、そんなことはどうでもいいのだ。いやはやどうも面白い。
今回は再読のおかげか、その場その場の勢いに翻弄されることなく、物語を落ち着いて受け止める余裕があった。そのため、途中から作品の主軸が見えてきた。埋蔵金の在処を示す、二管の名笛争奪戦なのである。そして全体の構成も、心細いどころか存分に練り込まれていることが分かる。六年前はちゃんと読めていなかったのだ。いやはやどうも面白い。
●主人公白鷺弦之丞についてちょいと書いて某所にアップ。これでこっち方面の宿題はあとひとつ。いろいろ読んでコラムを書かないといけない。