累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ドイル全集 第七巻』 改造社

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十四回として長編「ナイヂエル卿」を読んだ。いやはや、しんどかった。三百五十ページのこの作品に四日もかかってしまった。とにかくもう、会話が疲れてしまってしょうがない。なにかってえと名誉だ誓いだとわめきたてる大仰さと、お決まりの儀礼的な言い回しが続く冗長さ。ページをめくる手が止まりがちであった。

 それでも、内容自体は面白いのだ。主人公ナイヂエル青年が英仏戦争に赴き、愛する貴婦人に誓った三つの手柄をたてるまでの活躍を描く中世騎士物語である。様々な英雄豪傑が活躍し、活劇シーンにはバラエティがあって描写には迫力があって、その点はなかなか読ませる。たとえば逃亡する敵のスパイを追って繰り広げる海戦や、無法者集団に捕らえられた仲間を救出するための攻城戦など。最後のクライマックスとなる合戦なんざちょっとしたものであった。

 第三十二回でも書いたのだが、ドイルの著作権は切れている。物語展開そのものは確かに面白いので、簡潔な会話とスピーディーな展開とに仕立て直した再話バージョンなら、もっと手軽に楽しめるだろう。

 これで第七巻を読み終え、来月からは第八巻に取り掛かる。いよいよ全八巻の読破が見えてきた。

●書店に寄って本を買う。
『吸血鬼ヴァーニー 第一巻』 国書刊行会
 第二巻は「奇想天外の本棚」シリーズの第二期以降になるわけか。ぜひとも完訳までシリーズが続くよう願っておく。