累風庵閑日録

本と日常の徒然

『白夫人の幻』 R・V・ヒューリック ポケミス

●『白夫人の幻』 R・V・ヒューリック ポケミス 読了。

 今回狄知事が取り組むのは、次々と人が殺され直接間接に何人もが関わる派手で複雑な事件である。蒲陽の街で知事があちらこちらと関係者を訪ね、聞き込みを重ねながら事件を追ってゆく様には、私立探偵小説の味わいが漂う。

 序盤の小さな出来事が、犯人を限定するようでいながら実はレッド・ヘリングになっているのがいい感じ。犯人を指し示すデリケートな伏線も嬉しい。だがそれよりも、ストーリーの流れに関わる伏線に感心した。あの(伏字)がここでこうやって使われるのか。

 作中で最も際立っている登場人物が良菫花、本名アルタン・ツェツェグ・ハットンという女丈夫である。モンゴル相撲の達人で、巨大な体躯でもってならず者達を散々にぶちのめす。なんともご機嫌なキャラクターであった。