累風庵閑日録

本と日常の徒然

未分類

『山本禾太郎探偵小説選I』 論創社

●『山本禾太郎探偵小説選I』 論創社 読了。 地道な捜査過程をじっくり描く作風は、嫌いではない。けれど、真相やそこに至る展開にどうも捻りや驚きが乏しく、読後感としてはちと退屈である。 気に入ったのは、他の作品とは味わいの異なる「空想の果て」、珍…

『快楽亭ブラック集』 伊藤秀雄編 ちくま文庫

●三井記念美術館で、「大名茶人・松平不昧」と題する没後二百年特別展を観る。松江藩松平家第七代藩主松平治郷の、茶人として、コレクターとして、はたまたプロデューサーとして、それぞれの側面に焦点を当てた品々を展示している。内容に関する詳しいことは…

仙台横溝オフ

●この土日で、仙台で開催された横溝ファンのオフ会に参加してきた。 まず合流前に、多賀城の東北歴史博物館で東大寺の展示を観る。仙台に戻って第一陣と合流し、五人で鉤取の巨大古書店萬葉堂へ。夕方からのメインの飲み会は総勢七人で、二次会まで盛り上が…

殺人暦

●書店に寄って本を買う。『殺人暦』 横溝正史 柏書房『モリアーティ』 A・ホロヴィッツ 角川文庫ホロヴィッツは単行本で買うほどの興味はなかったので、文庫落ちするまで待っていた。

『橋本五郎探偵小説選I』 論創社

●『橋本五郎探偵小説選I』 論創社 読了。 巻末解説に、収録作品の傾向について書いてある。大意としては、意外性のある中間小説といったタイプの作品で、風俗小説の古びるのが早いのと同様に、再評価されることなく埋もれたままになっている、と。読んでみ…

『とむらい機関車』 大阪圭吉 創元推理文庫

●『とむらい機関車』 大阪圭吉 創元推理文庫 作品をまとめて読むのは初めて。一読驚嘆、素晴らしい傑作短編集であった。刊行当時、大いに話題になったのも頷ける。収録作中のベストは「坑鬼」である。以前何かのアンソロジーで読んだはずだが、再読でも薄れ…

『間に合わせの埋葬』 C・D・キング 論創社

●『間に合わせの埋葬』 C・D・キング 論創社 読了。 前半は退屈。主人公ロード警視の、バミューダでの休暇の模様が延々と描かれる。美しい景色を愛で、やたらと酒を飲み、綺麗な人妻やお姉さんにメロメロになって、全力で休暇を満喫するロード。まったくい…

柩の中と赤の中

●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。今回は第十二作「柩の中の女」を読む。 初出版と文庫版とを比較すると、両者の間にはほぼ異同無し。やはり、東京文芸社版に収録されていない作品は改稿されていないようだ。 ところで、何度も読んでい…

『葬儀屋の次の仕事』 M・アリンガム 論創社

●『葬儀屋の次の仕事』 M・アリンガム 論創社 読了。 登場人物達の奇天烈な造形を楽しむ作品である。事件は茫洋としてつかみ所が無く、アリバイや手掛かりの検討といったアプローチには乏しく、殺人の謎さえほとんど脇に追いやられてしまう。読者は主人公キ…

人間ドック

●八月の人間ドックの予約をした。ずいぶん気が早いようだが、鼻から挿す胃カメラを受診するためには今の時期から動かないといけない。

『江戸川乱歩と13の宝石』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『江戸川乱歩と13の宝石』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。 巻末解題に、過去のアンソロジーとの重複を避けることを優先するあまり、佳作を避けて凡作を採るのは本末転倒だとある。まあ、真っ当である。おかげで、収録作の四割ほどが再読であっ…

探偵術教えます

●書店に寄って本を買う。『うっかり鉄道』 能町みね子 幻冬舎文庫『探偵術教えます』 P・ワイルド ちくま文庫ワイルドは晶文社の単行本を既読だが、追加収録の一編のために購入。鉄道ものノンフィクションは、店頭で見かけて衝動買い。基本的に衝動買いは己…

『徳冨蘆花探偵小説選』 論創社

●『徳冨蘆花探偵小説選』 論創社 読了。 なにしろ明治時代の文章である。改行がほとんどなく、大半のページにみっしり文字が詰まっている。しかも快楽亭ブラックのような口演の速記ではなく、直に書いた小説なので、よりいっそう四角四面で読み辛い。それで…

『アララテのアプルビイ』 M・イネス 河出書房新社

●『アララテのアプルビイ』 M・イネス 河出書房新社 読了。 不思議な小説である。序盤の展開も、膝の裏をカックンとされるような中盤も、登場人物達も、なんとも奇妙。事件そのものも一筋縄ではいかない。殺人の謎よりも、今ここで何が起きているかの方に重…

つまみ食いが増える

●論創ミステリ叢書の徳冨蘆花を読んでいる。つまらなくはないが、明治時代の小説集を一気に通読するのはしんどすぎる。今日までで中断して、明日からは別の本を手に取ることにする。快楽亭ブラックの中断に加え、またしてもつまみ食いの本が増えてしまうが、…

葬儀屋の次の仕事

●書店に寄って本を買う。『加納一朗探偵小説選』 論創社『葬儀屋の次の仕事』 M・アリンガム 論創社『間に合わせの埋葬』 C・D・キング 論創社『挿絵叢書(6) 茂田井武(一)』 皓星社このところの論創社は、なかなかいい値段である。この先いつまで付…

『久山秀子探偵小説選I』 論創社

●『久山秀子探偵小説選I』 論創社 読了。 どうやら久山秀子って、才知に長けて器用な人だったようだ。その作品は多彩で軽快。会話も面白い。シリーズ主人公は女掏摸隼お秀だが、彼女が語り手を務める作品だけではなく、妹分が語る作品や保護者格の私立探偵…

『新 顎十郎捕物帳』 都筑道夫 講談社文庫

●『新 顎十郎捕物帳』 都筑道夫 講談社文庫 読了。 結末で新たな情報が次から次へと飛び出し、事件が一から十まで再構築されるという、いかにも都筑流の展開がいくつかの作品で見られる。どうもそういうのは、私の好みではない。だがそれはそれとして、全般…

『三十棺桶島』 M・ルブラン 偕成社

●『三十棺桶島』 M・ルブラン 偕成社 読了。 予想外にインパクトのある物語であった。よくあるスリラーかと思っていたら、なかなかそうではない。地下に潜む「やつら」が生贄を要求するといったホラーの味わいもある。姿を見せない敵から矢や投げ斧によって…

総括

●今月の総括。買った本:九冊読んだ本:十冊最後に明治ものに手を出したので、十一冊は読めなかった。まあ分かっててやったことであるが。

流の暁

●ちくま文庫の『快楽亭ブラック集』から、「流の暁」を読む。 なにしろ明治時代の文章である。改行がほとんどなく、ほぼ全てのページにみっしり文字が詰まっている。さぞかし読み辛いだろうと身構えていたのだが、意外なほど読みやすい。話し言葉を速記で記…

檻の中と洞の中

●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。今回は第七作「檻の中の女」を読む。 初出版は三段組み十ページで、前編が三節、解決編が四節の構成である。角川文庫版は構成が同一で、約三十ページの分量になっている。ざっと読み比べてみると、両…

『盗まれたフェルメール』 M・イネス 論創社

●『盗まれたフェルメール』 M・イネス 論創社 読了。 絵画盗難を巡るスリラー。シリアスなトーンで書かれているが、所々にコメディめいた味わいがあって楽しい。特に、アプルビイがモーの店を訪れてからの騒動は出色の出来である。事件の謎は(伏字)し、ア…

誘蛾灯

●電車に乗って街に出て、書店に寄って本を買う。『誘蛾灯』 横溝正史 柏書房刊行が順調で、目出度いことである。●お願いしていた本が届いた。『空魔鉄塔』 大下宇陀児 暗黒黄表紙文庫それにしても、もの凄いレーベルである。

『犯人は秘かに笑う』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●午前中は野暮用。●『犯人は秘かに笑う』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。「名作で読む推理小説史」の六巻目、ユーモアミステリー傑作選である。気に入った作品とその理由とを挙げておく。水谷準「われは英雄」の、主人公の陽性なキャラクター。香…

怪盗ニック全仕事

●書店に寄って本を買う。『鉄道エッセイコレクション』 芦原伸編 ちくま文庫『怪盗ニック全仕事5』 E・D・ホック 創元推理文庫『挿絵叢書(5)高井貞二』 末永昭二編 皓星社先日の日記でもう切ると書いた挿絵叢書を、迷った挙句買ってしまった。何かに負…

『松本恵子探偵小説選』 論創社

●『松本恵子探偵小説選』 論創社 読了。 育ちの良さがにじみ出ているのか、全般的に平明で上品である。それぞれバラエティに富んだ内容を、短いページできっちりまとめて形にしている。夫である松本泰の書く、(伏字)ている。何かを褒めるために別の何かを…

『それゆけ、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会

●『それゆけ、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会 読了。 相変わらずウッドハウスの、特に短編集の読み方がよく分からない。何を面白がればいいのだろうか。第一、どれも似たような話なので、途中で飽きてくる。そんななか割と楽しめたのが、「ジー…

『裸で転がる』 鮎川哲也 角川文庫

●『裸で転がる』 鮎川哲也 角川文庫 読了。「鮎川哲也名作選」の第七巻である。どうも今回はちと低調であった。短いページで鮎哲流の地道なミステリを書こうとすると、結末があっけなくなりがちのようだ。 比較的面白かった作品を挙げておく。「女優の鼻」は…

昼酒

●午前中は鮎川哲也の短編集を少し読む。●午後はかつての飲み仲間と久しぶりに再会して、昼酒をかます。遠方に帰るおっさんと別れたのはまだ明るい時分だったが、大概飲んだくれてしまったので、その後何もできず。たまにはこんな週末があってもいい。