解明に至る展開として、(伏字)ているのがちと期待と違ったけれども、犯人はかなり意外。そして、物証を犯人に結び付ける流れがお見事。読者が同じ手順を踏んで犯人にたどり着けるとは思えないけれども、それがカーの持ち味である。
途中で犯人とバンコランとが会話している場面に描かれている伏線が、これまた気付くはずないだろと思える些細なもので。それがカーの持ち味である。解明部分を読んだ後、後戻りして確認する作業の楽しさよ。
ジェフ・マールの活躍に伴うサスペンスも、結末の盛り上がりもちょっとしたもの。パリの夜の爛熟と退廃、蝋人形館の暗さと陰惨さ、といった雰囲気もいい感じ。