●『列車探偵ハル』 M・G・レナード&S・セッジマン ハヤカワ・ジュニア・ミステリ 読了。
「王室列車の宝石どろぼうを追え!」という副題が付いている。実にどうも、ちゃんとしたミステリであった。伏線があって捻りがあって、レッド・へリングがあって謎解きシーンも上々で。娯楽小説のお約束としてアクションシーンも盛り込まれている。宝石の隠し場所はちょいと独創的。いくつか気になる点はあるが、難癖をつけるようなものなのでここには書かない。
主人公ハルは、目にしたものをなんでもスケッチしておく趣味があって、後々それが事件解決に効いてくる。手掛かりの一つは、鉄道好きの人物の行動によって得られる。その辺り、キャラクターの造形がきちんと事件に結びついているわけだ。
今のタイミングでこの本を読んだのには理由がある。シリーズ第二巻が今月後半に出る予定なので、そいつを買うかどうかの判断材料にしたい。で、結論として第二巻の購入は保留。面白かったのに保留する理由は、主人公の造形にある。明るく素直でおりこうさんで前向きで、正義感が強く行動力もある。そういうのは、おじさんもうしんどいのだ。このレーベルの想定読者である小学生・中学生にこそ読まれるべき本である。