累風庵閑日録

本と日常の徒然

「あかずの間」の初出

国会図書館から、横溝正史「あかずの間」の、初出テキストのコピーを入手した。掲載誌は『なかよし』(昭和三十二年夏季増刊号・三巻十一号)である。

 早速、角川文庫『姿なき怪人』に収録されているバージョンとざっと見比べてみた。まず文章全体が、初出の敬体から文庫版の常体へと改変されている。また、平仮名を漢字に直している個所が多々ある。このため、両者で文章の味わいが大きく変わってしまっている。ストーリーや人名など、基本事項の改変はなさそう。単語の改変で気付いたのは、複数個所の「おまわりさん」⇒「警官」のみ。

 改変の是非については、正史自身が承諾していたのだろうから、ここでは問題としない。ただ、低年齢層の読者向けに正史がどのような文章を書いたのか、文庫からは見えなくなっているのがちと残念ではある。

 本件は、横溝ジュブナイルに対する山村正夫の影響を確認する、個人的プロジェクトの一環である。面白いので、今後とも初出コピーの入手活動を続けていこうと思う。