累風庵閑日録

本と日常の徒然

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十五回「爐邊物語」前半

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十五回として、第八巻の「爐邊物語」から前半の五編百ページほどを読んだ。気に入った作品は、オチの凄みが秀逸な「革の漏斗」、冒頭の不可解な謎が魅力的な「時計を持った男」、凄絶な結末の「カヴイヤ…

『歴史を考えるヒント』 網野義彦 新潮文庫

●『歴史を考えるヒント』 網野義彦 新潮文庫 読了。 フィクションを読むのが少々疲れてきたので、気分転換にノンフィクションを読む。歴史を研究するとき、古文献に書かれた言葉が当時どのような意味を持っていたのかに意識を向けることが重要であると説く。…

『濃霧は危険』 C・ブランド 国書刊行会

●『濃霧は危険』 C・ブランド 国書刊行会 読了。 「奇想天外の本棚」叢書の一冊で、ジュブナイルである。悪漢達に盗まれた家伝の宝物を、ひょんなことからその家の少年が追うことになる冒険譚。ふとした行き違いで悪漢グループから手に入れた暗号メモが、主…

『死との約束』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『死との約束』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 記憶も定かでない三十年以上昔、この作品をハヤカワ文庫で読んだ。その後、戯曲版を論創海外ミステリで読んだ。引っ越しの際に文庫が見当たらなくてやむを得ずクリスティー文庫版を買い直しておい…

『猿の手』 W・W・ジェイコブス 綺想社

●『猿の手』 W・W・ジェイコブス 綺想社 読了。 副題は「ジェイコブス怪奇幻想作品集」である。とはいうものの、超常現象とは無縁の犯罪小説や滑稽譚も含まれている。十九世紀末から二十世紀初頭にかけて書かれた作品なので、まだ娯楽小説のジャンルが未分…

『間違いの悲劇』 E・クイーン 創元推理文庫

●『間違いの悲劇』 E・クイーン 創元推理文庫 読了。 全編に渡って、執拗なまでの言葉へのこだわりがいかにもクイーンである。それは時に物知りクイズめいた領域に達する。こだわりはダイイング・メッセージの形で作品になり、しかもただそのメッセージを読…

『扉の影の女』 横溝正史 角川文庫

●『扉の影の女』 横溝正史 角川文庫 読了。 今度の日曜に開催される朗読劇の題材が、この本の表題作である。そこで予習として、久しぶりに再読することにした。前回読んだのは約九年前である。今日の日記は、その時の記述を多少修正を加えて再録する形になる…

『新青年傑作選 第二巻 怪奇・幻想小説編』 中島河太郎編 立風書房

●『新青年傑作選 第二巻 怪奇・幻想小説編』 中島河太郎編 立風書房 読了。 歳とともに小説の好みが変わってくるってえのは、さして珍しいことではないだろう。今、国内の怪奇・幻想系探偵小説はあまり響かなくなっている。暗く、哀しく、ねちこい作品を読む…

『ゴルファー シャーロック・ホームズの冒険』 B・ジョーンズ ベースボール・マガジン社

●『ゴルファー シャーロック・ホームズの冒険』 B・ジョーンズ ベースボール・マガジン社 読了。 イベントやなんかで読書時間を確保できず、三百ページに満たないこの本に五日もかかってしまった。ホームズは探偵活動と同時並行でゴルフにも熱心に取り組ん…

『セントラル・パーク事件』 C・ライス ハヤカワ文庫

●『セントラル・パーク事件』 C・ライス ハヤカワ文庫 読了。 明るくユーモラスで軽快で、実にもう読んでいて楽しい作品であった。七年の失踪の後再びニューヨークに戻ってきた男ピジョン。そんな彼を金儲けのために誘拐する主人公コンビ、ビンゴとハンサム…

『百万に一つの偶然』 R・ヴィカーズ ハヤカワ文庫

●『百万に一つの偶然』 R・ヴィカーズ ハヤカワ文庫 読了。 倒叙ミステリの迷宮課シリーズ第二巻である。最終的に殺してしまうほど相手への憎しみを募らせ、あるいは欲を募らせる犯人。最終的に殺されてしまうほど相手を追い詰めてしまう被害者。そんな人達…