累風庵閑日録

本と日常の徒然

2023-01-01から1年間の記事一覧

「火星のくも人間」

●作品社の『都筑道夫創訳ミステリ集成』から、「火星のくも人間」を読んだ。感想は通読してから。年内には読了できると思う。

『殺人の代償』 H・ホイッティントン 扶桑社ミステリー

●『殺人の代償』 H・ホイッティントン 扶桑社ミステリー 読了。 浮気にのめり込んだ男が、冷え切った関係の妻を殺そうと企む。言っちゃあ悪いがありきたりの設定である。中盤までは、語り手の男が妻の殺害計画を着々と実行に移す顛末が語られる。典型好きの…

『久生十蘭ジュラネスク』 河出文庫

●『久生十蘭ジュラネスク』 河出文庫 読了。 どうにも感想を書くのが難しいので、読んだということだけを記しておく。ひとつだけ、「死亡通知」について。十蘭の凄みを凝縮したような、「水草」という傑作掌編がある。「死亡通知」はなんと、この「水草」を…

『白夫人の幻』 R・V・ヒューリック ポケミス

●『白夫人の幻』 R・V・ヒューリック ポケミス 読了。 今回狄知事が取り組むのは、次々と人が殺され直接間接に何人もが関わる派手で複雑な事件である。蒲陽の街で知事があちらこちらと関係者を訪ね、聞き込みを重ねながら事件を追ってゆく様には、私立探偵…

『やかましい遺産争族』 G・ヘイヤー 論創社

●『やかましい遺産争族』 G・ヘイヤー 論創社 読了。 とにかく登場人物達が活き活きと描かれていて大変によろしい。探偵活動に夢中になるティモシー少年、傲慢で軽率で陰険なポール、極端なほど一生懸命主人に仕えるメイドのオグルなど、人間味があふれてい…

『材木座の殺人』 鮎川哲也 双葉社

●『材木座の殺人』 鮎川哲也 双葉社 読了。 三番館シリーズの第四集である。気に入ったのは以下のようなところ。状況の不可解さが犯人に直結する「棄てられた男」、扱われる謎が魅力的な「人を呑む家」、犯人の計画がいかにもミステリ的な「同期の桜」。 個…

『死の相続』 T・ロスコー 原書房

●『死の相続』 T・ロスコー 原書房 読了。 富豪の農場主が殺され、屋敷に相続人達が呼び集められた。そこで読み上げられる奇妙な遺言状。そんな序盤の展開を読むと、ははあこの作品はこのあと相続人達が殺されてゆくのだな、と想像するだろう。確かに、方向…

『サインはヒバリ』 P・ヴェリー 論創社

●『サインはヒバリ』 P・ヴェリー 論創社 読了。 誘拐事件を主題とするジュブナイル。日本で独自に付けた副題が「パリの少年探偵団」である。ケストナー「エーミールと探偵たち」のような陽性の探偵活動劇を想像していたら、意外にも叙情的な物語であった。…

『九番目の招待客』 O・デイヴィス 国書刊行会

●『九番目の招待客』 O・デイヴィス 国書刊行会 読了。 クリスティー「そして誰もいなくなった」の先駆作であるという情報を事前に知ってしまうと、この先どうなるかの興味がやや減殺される。なるほどこの作品では閉鎖空間に集められた人々が順番に死んでい…

『幻想と怪奇2』 早川書房編集部編 ポケミス

●『幻想と怪奇2』 早川書房編集部編 ポケミス 読了。 たぶん未読だろうと思う作品のなかでは、ジョン・コリア「ビールジーなんているもんか」がベスト。ありがちなオチではあるが好みに合っている。再読ではW・W・ジェイコブズ「猿の手」が、やっぱり名作…

菊水江戸日記

●書店に出かけて本を買う。『菊水江戸日記』 横溝正史 春陽文庫『くろて団は名探偵』 H・J・プレス 岩波少年文庫 ●今月の総括。買った本:十三冊読んだ本:十一冊

『別冊・幻影城 NO.7 高木彬光』

●『別冊・幻影城 NO.7 高木彬光』 読了。 「誘拐」 犯人の計画に感心した。これはいい。読んでいる途中は、(伏字)要素がちと興醒めであった。だが、その部分にもきちんと神経が行き届いていることが分かって、なおのこと関心する。私好みの、警察の地…

『七之助捕物帖 第三巻』 納言恭平 捕物出版

●『七之助捕物帖 第三巻』 納言恭平 捕物出版 読了。 長くても二十ページ少々の作品ばかりなので、伏線とロジックとを練り込むには短すぎる。かといって捻りと切れ味とで勝負する作風でもなし。ミステリ的な小ネタがちょいちょい盛り込まれてはいるのだが、…

『ドイル全集8』 C・ドイル 改造社

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの最終回、第四十回として、第八巻で読み残していた「爐邊物語」後半の六編百ページほどを読んだ。そのうち四編は再読だったし、初読の「B二十四號」もストレートすぎる展開でさして感銘を受けず。せっかくの…

『黒猫になった教授』 A・B・コックス 論創社

●『黒猫になった教授』 A・B・コックス 論創社 読了。 こりゃあ面白い。明るく軽快な展開に、この先どうなるかの興味とともに流されていけばいい作品である。なにより題名になっている黒猫がいい感じ。天才的な生物学者リッジリー博士が自らの理論に基づい…

『新青年傑作選 第三巻 恐怖・ユーモア小説編』 中島河太郎編 立風書房

●『新青年傑作選 第三巻 恐怖・ユーモア小説編』 中島河太郎編 立風書房 読了。 暗く、ねちこく、湿っぽい作品はどうも好みではない。コメントを付けたい作品は多くはない。江戸川乱歩「陰獣」はもう何度も読んでいるが、やはりつくづく感心する。昭和三年に…

『殺す者と殺される者』 H・マクロイ 創元推理文庫

●『殺す者と殺される者』 H・マクロイ 創元推理文庫 読了。 中盤過ぎまでは、言っちゃあ悪いがありきたりのサスペンスである。急な予定変更で早く帰宅した夫を、不審者と間違えて射殺した妻。だが、彼女は本当に屋敷に侵入してきた人物を夫だと気付かなかっ…

『善意の殺人』 R・ハル 原書房

●『善意の殺人』 R・ハル 原書房 読了。 犯人は誰か、という興味にあまり重点を置かず、(伏字)という点が意外性のキモである特異なミステリ。この特異さは、なるほど面白いことを考えたものですねえとは思う。思うが、結局は読み終えても平熱であった。な…

『阿呆旅行』 江國滋 中公文庫

●『阿呆旅行』 江國滋 中公文庫 読了。 五十年ほど前に雑誌連載された紀行文集である。なんとも滋味深い老成した文章で、これを三十六歳で書いたのかと驚く。でも実は、なんら驚くことではないのかもしれない。人の外見を考えても、今と昔とでは年齢に応じた…

特別開催横溝正史読書会『夜光虫』

●新大阪駅にほど近い貸会議室で、横溝正史ファンイベント『横溝正史発表会&読書会』が開催された。参加者及びスタッフ総勢四十二名という盛況であった。その第二部が「『夜光虫』読書会」である。いつもは参加者のみで小ぢんまりと運営している読書会なのだ…

『ファラデー家の殺人』 M・アリンガム 論創社

●『ファラデー家の殺人』 M・アリンガム 論創社 読了。 犯人の設定が上出来で、もうこれだけで満足。動機が(伏字)というのは、読者が真相に近づくのにかなり高いハードルだと思わないでもないが、まあ些細なことである。もうひとつ、ファラデー家の面々が…

『完全犯罪大百科(上)』 E・クイーン編 創元推理文庫

●『完全犯罪大百科(上)』 E・クイーン編 創元推理文庫 読了。 収録されているのは十九世紀末から前世紀半ばまでの作品だし、扱われている犯罪は殺人が少なく泥棒や詐欺が多いしで、全体的に素朴で長閑な味わいである。たまにはこういうのもいい。 特に面…

『死への祈り』 L・ブロック 二見文庫

●『死への祈り』 L・ブロック 二見文庫 読了。 表面的には解決したことになっている事件。その裏に潜む殺人鬼に、マット・スカダーが挑む。事件そのものは殺伐としてハードなものだが、展開には本格ミステリの匂いがちょいちょい漂う。犯人の計画もそれっぽ…

今月の総括

●定期でお願いしている本が届いた。『ファラデー家の殺人』 M・アリンガム 論創社『黒猫になった教授』 A・B・コックス 論創社 ●今月の総括。買った本:十二冊読んだ本:十冊 古本を二冊買ったために、二冊超過してしまった。

龍潭譚

●立風書房の国内ミステリアンソロジーを半分まで読んで中断。明日から別の本を読み始める。 ●書店に寄って本を買う。『龍潭譚/白鬼女物語』 泉鏡花 平凡社ライブラリー ●同人誌『ネタバレ全開! 横溝正史読書会レポート集3』が完成した。九月十日の大阪文…

菊水兵談

●昨日、久しぶりに古本を買った。『隠密飛竜剣』 高木彬光 桃源社ポピュラーブックス『ホテル探偵ストライカー』 C・ウールリッチ 集英社文庫 ●注文していた本が届いた。『瓢庵先生捕物帖 第三巻 赤い匕首』 水谷準 捕物出版 ●書店にでかけて本を買う。『菊…

『夢の10セント銀貨』 J・フィニイ ハヤカワ文庫FT

●『夢の10セント銀貨』 J・フィニイ ハヤカワ文庫FT 読了。 主人公はうらぶれてぱっとしない青年。代り映えのしない灰色の日常にほとほとうんざりしている。そんな彼が、偶然手に入れた奇妙な銀貨の呪力を受けて、ちょっとだけ違う並行世界に入り込んでし…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十九回「伯父ベルナツク」

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十九回として、第八巻から中編「伯父ベルナツク」を読んだ。フランス革命を逃れて英国に渡った亡命貴族の跡取り息子、ルイ・ド・ラヴァルが主人公。本来彼が相続すべき城と所領とを、革命の暴動に乗じて…

『七面鳥殺人事件』 C・ライス ポケミス

●『七面鳥殺人事件』 C・ライス ポケミス 読了。 残念ながらちょいと低調であった。かなり早い段階で事件の核心が思い浮かんでしまったので、意外さは感じなかった。ロジックや外連味といった要素も豊富とは言い難い。事件は銀行強盗団や脱獄囚グループがか…

『シャーロック・ホームズの大学』 長沼弘毅 実業之日本社

●『シャーロック・ホームズの大学』 長沼弘毅 実業之日本社 読了。 シリーズ中の酒が登場するシーンを列挙した部分がちょっと面白かった。そこから読み取れるのは以下のような情報である。ウイスキーと水という組み合わせはほとんど登場せず、ウイスキーに合…