累風庵閑日録

本と日常の徒然

2023-01-01から1年間の記事一覧

名探偵ホームズとワトソン少年

●定期でお願いしている本が届いた。『名探偵ホームズとワトソン少年』 A・C・ドイル 論創社 論創海外ミステリが、これでついに三百巻に達した。素晴らしいことである。 ●今月の総括。買った本:六冊読んだ本:十冊

『大迷宮』 横溝正史 ポプラポケット文庫

●『大迷宮』 横溝正史 ポプラポケット文庫 読了。 九月の横溝イベントに向けて、副読本として読んだ。目的は、「夜光虫」との関連を確認することにある。柏書房版で読んでも角川文庫で読んでも構わなかったのだが、せっかく買って積ん読になっていたのでポプ…

『証拠は眠る』 A・フリーマン 原書房

●『証拠は眠る』 A・フリーマン 原書房 読了。 今回二番目に感心したのが、殺人の手段である。なるほど、その手があったか、と思う。しかもその手段を採用したが故に必然的に証拠を残してしまう展開はお見事。今回最も感心したのが、犯行と犯人とを結びつけ…

『ゴルファー シャーロック・ホームズの新冒険』 B・ジョーンズ ベースボール・マガジン社

●『ゴルファー シャーロック・ホームズの新冒険』 B・ジョーンズ ベースボール・マガジン社 読了。 シリーズ前作『~冒険』は短編集だったが、今回は長編である。組織的なインチキ賭けゴルフが横行し、多くのゴルファー達が大金や土地、屋敷を失っていた。…

「金座太平記」その他

●九月の横溝イベントに向けて、隙間時間に関連作品をちょいちょい読んでいる。これまでに「金座太平記」、「妖説孔雀の樹」、「三本の矢」、と読んでいった。「金座太平記」は緋牡丹銀次捕物帳の一編で、「夜光虫」の基本骨格を保ったまま時代小説に仕立て直したもの。…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十八回 「愛の二重奏」

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十八回として、第八巻から若い男女の新婚生活を描く「愛の二重奏」を読んだ。何も起きなければさすがに小説にならないが、若夫婦が遭遇する出来事は波乱万丈とは程遠く、ちょっとした起伏程度である。金…

『世界の名探偵コレクション10 エラリー・クイーン』 集英社文庫

●『世界の名探偵コレクション10 エラリー・クイーン』 集英社文庫 読了。 シリーズの第七巻である。四編収録されている小説は、『エラリー・クイーンの冒険』と『エラリー・クイーンの新冒険』とにも収録されている。再読なので感想は省略。新訳版を買って…

『小さな壁』 W・グレアム 論創社

●『小さな壁』 W・グレアム 論創社 読了。 この作品に対するアプローチは、登場人物の感情や価値観や様々な想いに寄り添うようにゆっくり読み進めるのがまっとうな態度なのかもしれない。生来せっかちなので、どうしてもストーリーを追う読み方をしてしまう…

『五つの箱の死』 C・ディクスン 国書刊行会

●『五つの箱の死』 C・ディクスン 国書刊行会 読了。 メインの謎は至ってシンプル。誰にも投入できたはずのない毒がどうやって飲み物に混入されたか。真相もまた単純明快で、私は思い浮かばなくてなるほどと感心したけれども、何かのはずみにぱっとひらめい…

『神変不知火城』 山田風太郎 論創社

●『神変不知火城』 山田風太郎 論創社 読了。 「少年小説コレクション」の第二巻である。後半の時代小説二編が、とにかくもうノリノリでスピーディーで御機嫌であった。どちらかといえば「地雷火童子」の方が好み。地雷火はどこにあるのか、という謎が全体を…

『製材所の秘密』 F・W・クロフツ 創元推理文庫

●『製材所の秘密』 F・W・クロフツ 創元推理文庫 読了。 組織犯罪の全容解明がメインのテーマである。殺人は起きるが、扱いは割と小さい。全体は第一部アマチュア、第二部プロフェッショナルに分かれている。それぞれの主人公は、製材業者の裏の姿に偶然不…

『動く指』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『動く指』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 一見平穏な田舎の村に、じわじわとはびこる中傷の手紙。事態がだんだんエスカレートし、やがてついに悲劇が起きる。というのがメインだが、それに並行してほぼ同等の重みでメロドラマが語られる。終盤…

『犬のミステリー』 鮎川哲也編 河出文庫

●『犬のミステリー』 鮎川哲也編 河出文庫 読了。 題名の通り、犬テーマのミステリアンソロジーである。気に入った作品は以下のようなところ。佐野洋「放火した犬」は、サスペンスも展開の起伏も程よく適量で、二時間ドラマの原作になりそう。多岐川恭「蝋燭…

「十三の階段/悪霊物語」

●注文していた本が届いた。『十三の階段/悪霊物語』 日下三蔵編 春陽堂書店 ●今月の総括。買った本:十冊読んだ本:十一冊

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十七回 「最後の戦艦」

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十七回として、第八巻の短編集「最後の戦艦」から後篇の八編百ページほどを読んだ。前篇は、作者の言葉によると歴史ノンフィクションと小説との中間を目指したようだが、後篇はすっかり小説である。気に…

『夜光虫』 横溝正史 角川文庫

●『夜光虫』 横溝正史 角川文庫 読了。 今月上旬から三週間ほどかけて、隙間時間に細切れで読んでいった。この作品は、九月に大阪で開催される横溝読書会の課題図書である。この読書会は特別開催で、横溝系イベントの第二部として企画されている。 九月だか…

『フランケンシュタインの工場』 E・D・ホック 国書刊行会

●『フランケンシュタインの工場』 E・D・ホック 国書刊行会 読了。 なんとも派手な作品である。本土との連絡手段を絶たれた孤島で、ほい一人死んだ、それもう一人死んだ、とコロコロ殺されてゆく。個々の殺人について深く検討する暇もなく、連続殺人のサス…

『怪奇人造島』 寺島柾史 パール文庫

●『怪奇人造島』 寺島柾史 パール文庫 読了。 巻末の記載によれば、この作品の底本は三一書房の少年小説体系である。だが、それ以外の書誌情報はない。たまたまこの作品は青空文庫にも収録されており、付随する情報によると初出は昭和十二年、雑誌「日本少年…

『災厄の紳士』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『災厄の紳士』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。 登場人物の造形がしっかりしていて、良くも悪くも個性的。そんな彼らが織り成す日常生活が活き活きと描かれ、ミステリだからサスペンスも孕んで面白く、ぐいぐい読める。たとえば主人公格のサラ・…

『七之助捕物帖 第二巻』 納言恭平 捕物出版

●『七之助捕物帖 第二巻』 納言恭平 捕物出版 読了。 三百ページほどの本に二十一編も収録されている。二十ページに満たない作品ばかりなので、伏線を散りばめてロジックで真相に至る構成にするには分量が足りない。かといって捻りと切れ味とで勝負する作風…

『名探偵登場』 山村正夫編 青樹社

●『名探偵登場』 山村正夫編 青樹社 読了。 八人のミステリ作家が合議の上一人の名探偵キャラクターを創造し、彼を主人公にした短編ミステリをそれぞれ書くというアンソロジー。真相があまりにも……な作品や、私の嫌いな人情噺臭が漂う作品があって、個人的な…

『マリンゼー島連続殺人事件』 D・ホイートリー 中央公論社

●『マリンゼー島連続殺人事件』 D・ホイートリー 中央公論社 読了。 捜査ファイル・ミステリーシリーズの第三巻。わずか八十ページほどで連続殺人を描く、なかなかに忙しい作品である。しかも第一の殺人は密室だというにぎやかさ。添付の小道具に手掛かりが…

『サハラに舞う羽根』 A・E・W・メースン 創元推理文庫

●『サハラに舞う羽根』 A・E・W・メースン 創元推理文庫 読了。 熱い物語であった。三角関係どころか、四人の男女の惚れたハレたが熱っぽく語られる。同時に、主人公の名誉回復と成長の物語でもある。ひたすら相手の幸せを願い、自らの信条に基づいて自ら…

『愛の終わりは家庭から』 C・ワトスン 論創社

●『愛の終わりは家庭から』 C・ワトスン 論創社 読了。 複数の物語が並行して語られる。一方は殺人事件で、シリーズキャラクターのパーブライト警部が捜査に取り組む。もう一方は、私立探偵がなにやら依頼をこなそうとしている。依頼主との会話では関係者の…

『吸血鬼の島』 森英俊/野村宏平編 まんだらけ出版部

●『吸血鬼の島』 森英俊/野村宏平編 まんだらけ出版部 読了。 副題は「江戸川乱歩からの挑戦状I SF・ホラー編」である。主に昭和三十年代に少年誌に連載された、乱歩名義の探偵クイズ集。というのは器の話で、実際は推理どころか本文中の単語を抜粋した…

『骨と髪』 L・ブルース 原書房

●『骨と髪』 L・ブルース 原書房 読了。 事件の依頼人は、従妹がその夫に殺されたと主張している。主人公キャロラス・ディーンが調査を進めると、次第におぞましい大量殺人の可能性が浮上してくる。しかしながら可能性はいつまで経っても可能性でしかなく、…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第三十六回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十六回として、第八巻の短編集「最後の戦艦」から、表題作を含む前半の十編百ページほどを読んだ。歴史の一コマを切り取って小説に仕立てた作品が多い。気に入った作品は以下のようなところ。 おそらく…

『闇が迫る マクベス殺人事件』 N・マーシュ 論創社

●『闇が迫る マクベス殺人事件』 N・マーシュ 論創社 読了。 前半はマクベスのリハーサルが進行する様を描き、開演が近づくにしたがって劇が成功するかどうかの緊張感が高まってゆく演劇小説である。これはこれでつまらなくはないのだが、なかなか事件が起…

『緑のダイヤ』 A・モリスン 東京創元社

●『緑のダイヤ』 A・モリスン 東京創元社 読了。 「世界大ロマン全集」第四巻である。表題作のほかに短編が二編収録されている。 アーサ・モリスン「緑のダイヤ」 競売でばらばらに売られた十一本のワイン。どうやらその中の一本に、インドの王族から盗まれ…

『明治・大正・昭和 日米架空戦記集成』 長山靖生編 中公文庫

●『明治・大正・昭和 日米架空戦記集成』 長山靖生編 中公文庫 読了。 いい気なもんだぜ感が漂う、無邪気な戯言が多かった。コメントを付けたい作品は少ない。福永恭助「科学小説 暴れる怪力線」は、戦前の防諜小説にありがちな「わるいがいじんをやっつけて…