累風庵閑日録

本と日常の徒然

2019-01-01から1年間の記事一覧

『ランポール弁護に立つ』 J・モーティマー 河出書房新社

●『ランポール弁護に立つ』 J・モーティマー 河出書房新社 読了。 法曹界を舞台に、様々な人生模様をちょっとした皮肉とユーモアとを交えて描く人情噺、ってなところ。登場人物達の個性が際立っているし、ちょいちょい笑えるところもあるしで、読んでいて退…

『紫甚左捕物帳』 横溝正史 今日の問題社

●『紫甚左捕物帳』 横溝正史 今日の問題社 読了。 十一月に捕物出版から刊行予定の『不知火捕物双紙』に、紫甚左も収録されるという。そっちで読んでもいいのだが、せっかく買ったのだからこっちで読む。収録作は紫甚佐シリーズの二編「富籤五人男」、「妻恋…

八人の招待客

●電車に乗って街に出て、書店に寄って本を買う。 『八人の招待客』 Q・パトリック 原書房 ●今回出かけた目的は、本の購入以外にふたつある。某施設を覗いてみることと、某美術館の展示を観ること。ところが途中で気が変わった。散歩がてら某施設の場所だけ…

『蘭郁二郎探偵小説選I』 論創社

●『蘭郁二郎探偵小説選I』 論創社 読了。 からりとして明るいトーンの文章がやけに読みやすい。論創ミステリ叢書で時々出くわす、妙にねちこい文章や文学臭をまとわりつかせた文体に比べると、もうそれだけで好感が持てる。 月澤俊平シリーズが、予想以上の…

『大はずれ殺人事件』 C・ライス ハヤカワ文庫

●『大はずれ殺人事件』 C・ライス ハヤカワ文庫 読了。 安心して楽しく読める、ライス印の秀作。序盤は、単純なテーマのように思える。殺人予告を公言した人物が、その後実際に発生した殺人事件の犯人かどうか。ところが物語はたちまちのうちに発展し、拡散…

『キャッスルフォード』 J・J・コニントン 論創社

●『キャッスルフォード』 J・J・コニントン 論創社 読了。 途中で大まかな真相に気付いてしまったので、意外さは感じなかった。けれど、ミステリを面白くする要素が存分に詰め込まれており、読んでいる間はとても充実した時間であった。その要素とはたとえ…

『正木不如丘探偵小説選II』 論創社

●『正木不如丘探偵小説選II』 論創社 読了。 長編「血の悪戯」がなかなか快調。大平刑事とダンサー宵の明星との会話が、思いがけず軽快でさくさく読める。どことなく漂うとぼけた味わいも好ましい。大平の隣室に住んでいる、病院からこっそり脳みそを持ち…

『恐怖通信』 中田耕治編 河出文庫

●『恐怖通信』 中田耕治編 河出文庫 読了。 バラエティに富んで上出来な怪奇小説アンソロジー。気に入った作品を、一言だけコメントを添えて並べる。 まあそうなるわな、とは思うが捻りの存在そのものが嬉しい、オーガスト・ダーレス「幽霊」。些細な記述が…

『でかした、ジーヴス!』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会

●『でかした、ジーヴス!』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会 読了。 構成の妙を味わう作品集。伏線や物事相互の意外なつながりの面白さは、ミステリに通じるものがある。だが、ジーヴスが問題を解決する手際の鮮やかさ意外さは、名探偵が難事件を解決する手…

魔女の不在証明

●お願いしていた本が届いた。 『キャッスルフォード』 J・J・コニントン 論創社 『魔女の不在証明』 E・フェラーズ 論創社 ●今月の総括。 買った本:十二冊 読んだ本:十一冊 論創ミステリ叢書を四冊読めたのが、まあ上出来。

血染めの旅籠

●書店に寄って本を買う。 『血染めの旅籠』 南絛範夫 創元推理文庫 『幽霊島』 A・ブラックウッド他 創元推理文庫 『モダニズム・ミステリ傑作選』 長山靖生編 河出書房新社 『ジーヴスの世界』 森村たまき 国書刊行会 ●国書刊行会のウッドハウス短編集を読…

『葛山二郎探偵小説選』 論創社

●『葛山二郎探偵小説選』 論創社 読了。 描写のくどさがしんどい作品もあるし、ページ数が足りないのかいろいろ置いてきぼりになっているような作品もある。だが概ねは佳作・秀作・傑作で、全体として上出来の短編集であった。捻りと切れ味、伏線とロジック…

「清姫の帯」

●かつて取り組んでいた「横溝正史の「不知火捕物双紙」をちゃんと読む」プロジェクトは、全八話のうち七話目まで読んで無念の中断をしていた。最終第八話「清姫の帯」のテキストが、入手できていなかったのである。ところが今回ありがたいことに、某方面から…

『眺海の館』 R・L・スティーヴンソン 論創社

●『眺海の館』 R・L・スティーヴンソン 論創社 読了 時代がかった台詞回しと、民話めいた素朴さと、一筋縄ではいかない少々の皮肉と、デフォルメの効いた人物造形と。本書を読んで感じるのは概ねそんなところ。ミステリの周辺書といった内容で、論創海外ミ…

『正木不如丘探偵小説選I』 論創社

●『正木不如丘探偵小説選I』 論創社 読了。 伏線、ロジック、意外な真相、あるいは捻りや切れ味。そういった観点で評価してはいけない作家のようだ。巻末解題に曰く、マニア向けではないからこそ「枠にとらわれない面白さがある」だそうで。そういうことな…

『妹尾アキ夫探偵小説選』 論創社

●『妹尾アキ夫探偵小説選』 論創社 読了。 「十時」は型通りの展開だが、その型が私好み。どうやら妹尾アキ夫の持ち味とはちょっと違っているようだが。中盤のサスペンスが上々なのが「スヰートピー」、「人肉の腸詰」、「本牧のヴィナス」といったところ。 …

二松学舎大学オープンキャンパス

●二松学舎大学のオープンキャンパスイベントで、横溝正史を題材にした模擬授業があるという。イベントの目的は来春の入学生募集にあるようなので、私ごときはまるでお呼びでない。それでも、参加資格に特に制限がないので、教室の隅っこで遠慮しているつもり…

『古書ミステリー倶楽部II』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●『古書ミステリー倶楽部II』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。 今回はどうも、やや低調であった。そのなかで気に入ったのは、以下のような作品。 横田順彌「姿なき怪盗」は、謎の設定は強烈だったが結末がちと不満。その不満点に関しては、巻末…

クリスピン本

●お願いしていたクリスピン本が届いた。 『Murder, She Drew Vol.1 Beware of Fen』 素晴らしい。ぜひとも既訳作品を全て読まなければ。そうしないと、特に後半がネタバレ前提のこの本を十分に味わえない。 ●今日から読み始めた論創社の妹尾アキ夫が、都市・…

『新アラビア夜話』 スティーヴンスン 光文社古典新訳文庫

●『新アラビア夜話』 スティーヴンスン 光文社古典新訳文庫 読了。 論創海外の新刊、スティーヴンソン【ママ】『眺海の館』は、「新アラビア夜話」第二巻をベースに編集されているそうな。この本は今月中に読みたいと思うが、まずは準備として、積ん読だった…

『ドルの向こう側』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫

●『ドルの向こう側』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫 読了。 いろいろあって読書時間を確保できず、ついさっきまで読んでいた。今から感想を文章に仕立てる時間はないので、読んだという記録だけ。真相は複雑で悲劇的な、いつものロスマク流。

『大下宇陀児探偵小説選II』 論創社

●『大下宇陀児探偵小説選II』 論創社 読了。 大下宇陀児をちょいと見直した。まず、デビュー作「金口の巻煙草」がなかなかいい。メインのネタは大したものとは思えないけれども、往時の学生生活が生き生きと描かれていて興味深い。随筆「処女作の思ひ出」…

『消えた玩具屋』 E・クリスピン ハヤカワ文庫

●『消えた玩具屋』 E・クリスピン ハヤカワ文庫 読了。 謎の設定に関しては、ちと戸惑うような構成である。中盤までは、そこで何が起きたか、という謎がメインとなっている。それ以降は、誰がそれをやったかという、前半では背後に退いていた謎が扱われる。…

『サイモン・アークの事件簿II』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『サイモン・アークの事件簿II』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。 評価ポイントは三つ。事件の謎、伏線、真相である。謎の魅力と伏線の妙とで、「死を招く喇叭」が個人的ベスト。吹く者をたちどころに老衰死させる呪いの喇叭、という突拍子もない事件…

『ドラキュラのライヴァルたち』 M・パリー編 ハヤカワ文庫

●『ドラキュラのライヴァルたち』 M・パリー編 ハヤカワ文庫 読了。 作者不詳の「謎の男」が面白かった。ストーカーの「ドラキュラ」以前に、こんなお約束通りの作品があるとは。ストーカー後の作品であるフレデリック・カウルズ「カルデンシュタインの吸血…

百本杭の首無死体

●書店に寄って、取り寄せを依頼していた本を受け取ってくる。 『百本杭の首無死体』 泉斜汀 幻戯書房 ●本が届いた。 『千両文七捕物帳 第一巻』 高木彬光 捕物出版 『千両文七捕物帳 第二巻』 高木彬光 捕物出版 『死の隠れ鬼』 J・T・ロジャーズ 別冊Re…

『蒼井雄探偵小説選』 論創社

●『蒼井雄探偵小説選』 論創社 読了。 短めの作品はネタに対してページ数が少なすぎるようで、どうも舌足らずなものが多かった。気に入った作品としてはまず、情景が恐ろしい「執念」。 「霧しぶく山」を読むのは三度目。どこかで読んだような真相にはあまり…

フランス鍵の秘密

●いろいろ調整して、日曜月曜という変則的な日程で秋田に行ってきた。通常は旅客列車が運行されない秋田港付近の貨物路線に、特別の臨時列車が運行されるというので、乗りに行ったのである。 ●それにしても、久しぶりに行く秋田は遠い。関東から出かけるとす…

眺海の館

●午前中は野暮用。午後からジムに行く……つもりだったが、気分が乗らずサボってしまう。今月はジム通いが低調である。。 ●お願いしてた本が届いた。 『眺海の館』 R・L・スティーヴンソン 論創社 今回の論創海外は一冊だけなのか、それとも後で出るのか。

『ポドロ島』 L・P・ハートリー 河出書房新社

●『ポドロ島』 L・P・ハートリー 河出書房新社 読了。 作品の多くが夢だの幻覚だの妄想だのを扱って、複数の解釈が成り立つ曖昧な結末に至る。一編だけならそれもまた一興であるが、似た傾向ばかり続くと飽きてくる。もっとはっきり書かんかい、と思ってし…