累風庵閑日録

本と日常の徒然

2021-01-01から1年間の記事一覧

更新しない

●今日から上中下三巻本の長編を読み始める。私のペースだと読了までに一週間はかかるだろう。読了日記は来週半ばまで更新しない。 ●定期でお願いしている本が届いた。『<アルハンブラ・ホテル>殺人事件』 I・オエルリックス 論創社

『ブルクリン家の惨事』 コール 新潮文庫

●『ブルクリン家の惨事』 コール 新潮文庫 読了。 老富豪の誕生パーティーのために屋敷に集まった人々。参加者の前で老人の遺言の内容が発表された翌日、二件の殺人が発覚する。なんとまあ、典型的な展開である。典型好きとしてはもうこれだけで嬉しい。しか…

『怪盗ニック全仕事3』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『怪盗ニック全仕事3』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。 それぞれが完全に独立した短編ではなく、シリーズの大きな流れの中で設定がゆったりと変化していっている。全仕事として通して読むと、そういった面も楽しめる。東京創元社さんはいい物を出して…

『温泉めぐり』 田山花袋 岩波文庫

●『温泉めぐり』 田山花袋 岩波文庫 読了。 今後温泉旅行に行くときの参考にはなりそうもない。なにしろ初刊が大正七年で、時代が大きく異なっている。それに伴って環境も激変しているはずである。道路も交通機関も、なにより温泉地そのものも。当時は実用的…

『クレタ島の夜は更けて』 M・スチュアート 論創社

●『クレタ島の夜は更けて』 M・スチュアート 論創社 読了。 軽ハードボイルドという分類がある。さしずめ本書は軽サスペンスだろう。主人公を少年少女にして多少のアレンジを加えれば、ほぼそのままジュブナイルミステリになりそうな軽い味わいである。 つ…

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第十八回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十八回として、引き続き第四巻を読んでゆく。今回は、医者とその周辺とを題材にした短編集「紅き燈火を繞りて」から、九編を読む。全十五編のうちの九編だが、前半は短い作品が多いので分量としてはほぼ半…

第八回オンライン横溝正史読書会『怪獣男爵』

●第八回オンライン横溝正史読書会を開催した。課題図書は『怪獣男爵』で、昭和二十三年に偕成社から書き下ろし刊行されたジュブナイルである。参加者は私を含めて九名。募集開始の告知からわずか数時間で枠が埋まるという、大変な盛況であった。 今回はツー…

『駅猫』 上田廣 大正出版

●『駅猫』 上田廣 大正出版 読了。 鉄道ミステリ六編を収録した個人短編集。主要登場人物が鉄道の職員だし、主な舞台が鉄道業界だったりするので、いわゆるトラベルミステリとはちと違う。 多くの作品に、どうも荒っぽく思える部分が見受けられる。だが、欠…

「おれは二十面相だ!!」

●光文社文庫の江戸川乱歩『怪人と少年探偵』を、年明けくらいまでかけて細切れに読んでいくことにする。今日は「おれは二十面相だ!!」を読んだ。普通のミステリなら、奇怪な事件の真相が(伏字)てえのは腰が抜けそうになるところだが、少年探偵団シリーズ…

『殺しにいたるメモ』 N・ブレイク 原書房

●『殺しにいたるメモ』 N・ブレイク 原書房 読了。 巻末解説によれば、この作品が長らく翻訳されなかったのは質とは無関係で、日本の翻訳のタイミングとずれたためであろうとのこと。全く頷けることである。実にもう、しんどくなるくらいロジックてんこ盛り…

『シャーロック・ホームズの紫焔』 長沼弘毅 文藝春秋

●『シャーロック・ホームズの紫焔』 長沼弘毅 文藝春秋 読了。 私の興味如何によって、面白く読めた章とそうでもない章とにはっきり分かれた本であった。第三章「ホームズと煙草」は、煙草に関する雑学が興味深い。第四章「タイヤの問題」は、作中の記述から…

『赤いランプ』 M・R・ラインハート 論創社

●『赤いランプ』 M・R・ラインハート 論創社 読了。 読んでいてストレスの溜まる作品であった。素人が他人に読ませることを想定せずに書いた日記という設定なので、意図的にこういう書き方をしたのだろうか。読者に情報を伝えるのになんでまたこんな(伏字…

『蝋人形館の殺人』 J・D・カー 創元推理文庫

●『蝋人形館の殺人』 J・D・カー 創元推理文庫 読了。 解明に至る展開として、(伏字)ているのがちと期待と違ったけれども、犯人はかなり意外。そして、物証を犯人に結び付ける流れがお見事。読者が同じ手順を踏んで犯人にたどり着けるとは思えないけれど…

『死者の長い列』 L・ブロック 二見文庫

●『死者の長い列』 L・ブロック 二見文庫 読了。 奇妙なクラブにまつわる奇妙な依頼が、主人公マット・スカダーのもとに持ち込まれた。犯罪かどうかすら分からない雲をつかむような依頼に対して、地道な捜査活動を続けるスカダー。やがて異常ともいえる状況…

今月の総括

●今月の総括。買った本:十二冊読んだ本:十冊 もう一冊読むだけの時間はあったのだが、もう一冊読むだけの集中力が残っていなかった。頭を休ませる日を設けた後で読み始めた長編は、明日には読了できる。

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第十七回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十七回として、第四巻を読み始める。今回は、「危険!」を表題作とする全十編収録の短編集を読む。ただし冒頭の「訳者の言葉」によると、そのうちの一編はなぜか第七巻に収録されているという。というわけ…

『オルレアンの魔女』 稲羽白菟 二見書房

●『オルレアンの魔女』 稲羽白菟 二見書房 読了。 メインとなる舞台はカンヌというから、イタリア国境にほど近い場所である。題材はオペラ、起きる事件はちと血液多め。となると自然に、血液多めのホラー映画を連想してしまう。イタリア、バレエ、血液多めと…

『シャーロック・ホームズの失われた災難』 J・マキューラス他編 原書房

●『シャーロック・ホームズの失われた災難』 J・マキューラス他編 原書房 読了。 クイーン編のアンソロジー「シャーロック・ホームズの災難」に、様々な理由から採用されなかったホームズパロディやパスティシュを集めた作品集である。 歴史的アンソロジー…

『中国黄金殺人事件』 R・V・フーリック 三省堂

●『中国黄金殺人事件』 R・V・フーリック 三省堂 読了。 互いに関係があるようなないような複数の事件が、同時並行で語られる。それぞれをただ解決するだけではなく、意外な方向に発展させてから最後はきちんと決着を付けてみせる作者の構成力がお見事。 …

『ダーク・デイズ』 H・コンウェイ 論創社

●『ダーク・デイズ』 H・コンウェイ 論創社 読了。 主人公が過去を回想した手記という体裁である。彼がなかなか熱い人物で、ほとばしる感情を叩き付けるように記している。文章の熱量がただ事ではない。ヒロインがこれまた感情が強く、主人公の熱に熱を加え…

『子供たちの探偵簿2 昼の巻』 仁木悦子 出版芸術社

●『子供たちの探偵簿2 昼の巻』 仁木悦子 出版芸術社 読了。 収録作中のベストは「倉の中の実験」で、本好きの登場人物の顛末が身につまされるし、奇妙な展開も記憶に残る。他に気に入った作品は、伏線と構成とに感心した「うさぎを飼う男」と「悪漢追跡せ…

『邪悪の家』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『邪悪の家』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。 真相は、早い段階でふと思い浮かんだので意外さを感じなかった。随分素直なミステリだと思ってしまう。騙された方が楽しめただろう。 読者を迷わす構造として、(伏字)ことがちょっと面白い。ポア…

『結婚って何さ』 笹沢左保 講談社文庫

●『結婚って何さ』 笹沢左保 講談社文庫 読了。 密室殺人がからむ巻き込まれ型サスペンス、と思っていたら意外なほどの広がりを見せる。展開に起伏があってすいすい読めるし、(伏字)ネタの真相には満足。伏線のさりげなさも気に入った。 読んでいる間は、…

『リュパンの冒険』 M・ルブラン 創元推理文庫

●『リュパンの冒険』 M・ルブラン 創元推理文庫 読了。 リュパンシリーズはあまり読んでいないのだが、そんな状態でイメージするいかにもシリーズらしい味わいである。実際、巻末解説にも「リュパン物語の特色をすべて盛り合わせた観」とある。この小説は戯…

『毒の神託』 P・ディキンスン 原書房

●『毒の神託』 P・ディキンスン 原書房 読了。 よくもまあ、これだけ設定を作り込んだものだ。独自の言語と文化とを持つ架空の沼族、単語カードによって人間と意思疎通ができるチンパンジー、奇妙な宮殿に住む砂漠の王族。主人公のイギリス人と、これら異文…

『蛇は嗤う』 S・ギルラス 長崎出版

●『蛇は嗤う』 S・ギルラス 長崎出版 読了。 舞台は北アフリカのタンジール。馴染みのない土地の魅力はあるが、中盤までの展開は割と平板。ところが事件が起きてからは快調に読める。伏線も意外性の演出も上々だし、いろいろな要素が納まるべきところに収ま…

今月の総括

●今月の総括。買った本:八冊読んだ本:十一冊 数か月前から細切れに読んできたドイル全集第三巻を読み終えた分だけ、いつもの月より一冊多かった。

葬られた女

●柏書房の横溝正史『蝶々殺人事件』から、由利先生ものの中絶作「模造殺人事件」だけを抜き読み。「蝶々殺人事件」は戦前の事件だが、こちらは戦後が舞台だ。金田一耕助が存在せず、由利先生が等々力警部の良き協力者の座を占めている世界は、ちと不思議な味…

『地中の男』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫

●『地中の男』 R・マクドナルド ハヤカワ文庫 読了。 これはどうも、大変な作品である。複数の家族間の人間関係が滅茶苦茶に入り組んで、からみ合いもつれ合って複雑怪奇。ロスマクの作劇法が天井を突き抜けた感がある。その複雑さは事件の全体像にも及び、…

『仮面劇場の殺人』 J・D・カー 原書房

●『仮面劇場の殺人』 J・D・カー 原書房 読了。 いつものカーの味わいで楽しい。たとえばクライマックスの舞台に(伏字)を選ぶのも、あるいはチェスタトンの遠い谺が聞こえてきそうな真相も。 初読ではまず気付かんだろうという伏線もカーの持ち味である…