累風庵閑日録

本と日常の徒然

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シャーロック・ホームズの失われた災難

●書店に寄って本を買う。『シャーロック・ホームズの失われた災難』 J・マキューラス他編 原書房●今月の総括。買った本:七冊読んだ本:十冊十一冊読めるかと思っていたけど、論創社のホームズにずいぶんてこずってしまった。

『無音の弾丸』 A・B・リーヴ 論創社

●『無音の弾丸』 A・B・リーヴ 論創社 読了。 ストーリーは捻りに乏しい一本調子で、これだけ? と逆に驚くほど。作品によっては、一般に知られていない毒物を使ったり、同様に知る人の少ない最先端の科学技術による殺人が行われる。探偵の側も、先端技術…

読み方を考える

●午前中は野暮用。●午後からミステリ短編集を少し読む。最初の一編を読んで思わず失笑しそうになるが、せっかくの本をこれでつまらないと切り捨ててしまうのはもったいない。どういう読み方をすれば楽しめるか、考えながら読み進めてゆくことにする。

『シャーロック・ホームズの古典事件帖』 A・C・ドイル 論創社

●『シャーロック・ホームズの古典事件帖』 A・C・ドイル 論創社 読了。 ホームズシリーズは何度も読んだ。ということは、収録作の展開も真相も、読む前から大体のところは分かっているということだ。そうなると本書の楽しみは、明治大正期の古風な文章を味…

鬼火

●書店に寄って本を買う。『鬼火』 横溝正史 柏書房横溝正史ミステリ短篇コレクションの第二巻である。単語のひとつにまで気を配る校訂が素晴らしい。

『わが名はタフガイ』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●週末を利用して、広島と兵庫とに行ってきた。初日土曜日は広島県の、去年復活延伸した鉄道路線の突端まで行ってきた。この街に特に用事はないので、十分待って乗ってきた電車で引き返す。広島の街に戻って、ブックオフを含め古本屋を三軒回るが、何も買う本…

シャーロック・ホームズの古典事件帖

●書店に寄って本を買う。『シャーロック・ホームズの古典事件帖』 A・C・ドイル 論創社『無音の弾丸』 A・B・リーヴ 論創社クレイグ・ケネディも興味深いけれど、特に前者に注目である。ホームズものの翻訳・翻案集で、横溝正史が少年時代に読んだという…

鞄の中の女

●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。昨日の続きで、第四作「鞄の中の女」を読む。 初出版が三段組み十ページ、それが文庫版になると五十ページほどになる。前編解決編どちらも三節で構成された初出から、前編四節、解決編五節の構成に改…

泥の中の女

●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。今回は第三作「泥の中の女」を扱う。初出時の題名は「泥の中の顔」である。 まずは構成の異同を確認する。三段組み十ページの初出が、文庫版では天晴れ六十ページにまで膨らんでいる。初出では、前編…

『殺人者登場』 N・マーシュ 新潮文庫

●『殺人者登場』 N・マーシュ 新潮文庫 読了。 少なくとも序盤は、誰もが犯行が可能でその手段も明白に思える。こんな設定で、いったいどうやってミステリの意外性を演出するのか。で、結末を読んでみると、なるほど、ふふふん。 それにしても、現場の見取…

『甲賀三郎探偵小説選』 論創社

●『甲賀三郎探偵小説選』 論創社 読了。 ただし、読了というのは一部保留がある。後半の「評論・随筆篇」にて、私が未読の作品が、いくつかネタバレされているのだ。それらの随筆・評論は、ひとまず読まないでおく。対象の作品が収録されている本は、論創社…

迷宮の対局

●書店に寄って本を買う。『歴史の話』 網野善彦 鶴見俊輔 朝日文庫『将棋推理 迷宮の対局』 山前譲編 光文社文庫

『10ドルだって大金だ』 J・リッチー 河出書房新社

●『10ドルだって大金だ』 J・リッチー 河出書房新社 読了。 前回読んだ『クライム・マシン』に続いて、なんとも素晴らしい短編集であった。ほぼ全ての収録作が面白く、文字通り粒揃いである。最も気に入ったのは「誰も教えてくれない」で、私立探偵小説を…

あらしの白ばと

●お願いしていた本が届いた。『あらしの白ばと 黒頭巾の巻』 西條八十 盛林堂ミステリアス文庫今年初の本買いである。注文したのは去年だったけれども。

『ギャルトン事件』 R・マクドナルド ポケミス

●『ギャルトン事件』 R・マクドナルド ポケミス 読了。 ロスマクって、こんなもんだったっけ? と思う。大きな偶然や強引な展開がちょいちょい出てくるし、読者が真相に到達できるような手掛かりも探偵の推理も全くない。もともとリュウ・アーチャーのシリ…

『三つの栓』 R・A・ノックス 論創社

●『三つの栓』 R・A・ノックス 論創社 読了。 ガス中毒死事件の真相は、死んだ本人が事故死(A)を偽装した自殺(B)である。と、思わせるように犯人が偽装した殺人(C)である。これらA、B、C三様の可能性を巡り、主人公夫婦と脇役の警部とが謎の解…

『平林初之輔探偵小説選I』 論創社

●『平林初之輔探偵小説選I』 論創社 読了。 予備知識なしで手に取った本だが、予想以上に楽しめた。単行本初収録の作品がいくつも含まれており、この叢書がいかに画期的なものか、いまさらながら認識した。……それはそうと活字がでかい。 好みとしては、「頭…

寺と博物館

●上野の国立博物館に、「博物館に初もうで」という企画を観に行く。「鳥獣戯画断簡」が主な目的。文字通り断簡で、掛軸一幅だけであった。ついでに、このタイミングで年間パスポートを買っておく。●博物館との連携企画として、寛永寺の根本中堂が一般公開さ…

『堀越捜査一課長殿』 江戸川乱歩 光文社文庫

●新年あけましておめでとうございます。今年も皆様にとってよい一年でありますように。もちろん私自身にとっても、よい一年であって欲しいものでございます。●いつものように朝五時に起床。ところがここでずっこける。せっかく大浴場があるホテルを選んだの…

テレビドラマ殺人事件

●年を越してから年末の日記を更新するのは間が抜けているが、細けえこたあ気にしない。●家にこもって年を越すのが嫌だったので、適当な街のビジネスホテルに泊まりに行くことにする。それはいいのだが、何時間も鉄道に乗って遠くまででかけるのが、だんだん…

年内最後

●年内最後の更新です。今年一年、皆様にはお世話になりました。ありがとうございます。来年もまた、よろしくお願いいたします。●光文社文庫の江戸川乱歩全集第二十巻『堀越捜査一課長殿』を少し読む。先月から、合間を見てちょいちょい読んでいったので、残…

『いきどまり鉄道の旅』 北尾トロ 河出文庫

●『いきどまり鉄道の旅』 北尾トロ 河出文庫 読了。 その先がない終着駅に行ってみるというテーマは、あまり盛り上がりを期待できない。それは読む前から想像がついていた。読み所としては、同行する写真担当氏との掛け合いを主体に、弥次喜多風の二人旅……に…

『過去からの声』 M・ベネット 論創社

●『過去からの声』 M・ベネット 論創社 読了。 主人公は、軽率で勝手な行動をして自らを窮地に追い込む。重要な証拠を隠し、とっさの嘘をつきまくる。そうやってサスペンスを維持する小説作法は、私の好みから遠い。それでもどうにかこうにかうんざりせずに…

江戸川乱歩と横溝正史

●書店に寄って本を買う。『森下雨村探偵小説選II』 論創社『江戸川乱歩と横溝正史』 中川右介 集英社これが今年の本の買い納めである。たぶん。

『赤い酒場』 半村良 出版芸術社

●『赤い酒場』 半村良 出版芸術社 読了。「箪笥」は、何度読んでも凄まじい名作。能登怪異譚では他に、「雀谷」、「蟹婆」が秀逸。「夫婦喧嘩」は、幽霊夫婦の喧嘩のとばっちりで語り手がぼろくそにけなされるという、落語のような佳作。他に、アイデア、捻…

「灰色の魔術師」 H・ランドン

●H・ランドン「灰色の魔術師」を読んだ。昭和十年に、雑誌『新青年』に六回に分けて訳載された作品である。これでようやく、二年越しの宿題を終えることができた。 舞台はニューヨーク郊外の陰鬱な屋敷。密室状態の「夢殿」で、屋敷の主人が殺された。凶器…

恐ろしき四月馬鹿

●午前中は野暮用。●用事を終えて帰宅途中に、書店に寄って本を買う。『恐ろしき四月馬鹿』 横溝正史 柏書房横溝正史ミステリ短篇コレクションの第一巻である。素晴らしい。嬉しい。いまどき、横溝正史のピカピカの新刊が出るなんて。

夢の中の女/霧の中の女

●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。まずは「夢の中の女」を読む。ここでひとつ確認。この作品の原題は「黒衣の女」だし、掲載誌も以降の作品とは違う。もともとシリーズ作品ではなかったのである。 物語を鑑賞することがプロジェクトの…

横溝正史『女シリーズ』の初出を読む

●横溝正史関連の大ニュースが発表された。今まで草稿の断片のみ存在が分かっていた、横溝正史の謎の作品「雪割草」の全貌が判明したというのだ。素晴らしい。掲載媒体もそれを所蔵している施設も分かったから、その気になれば今週末にでも読みに行ける。だが…

『ピカデリーパズル』 F・ヒューム 論創社

●『ピカデリーパズル』 F・ヒューム 論創社 読了。 表題作は、読んでいる途中で評価が二転三転した。終盤まではなかなか快調。着実堅実な捜査の過程をじっくり描く作風は、私の好みである。それが終盤になると、なにやら様子が変わってくる。これでは犯罪メ…