累風庵閑日録

本と日常の徒然

2017-01-01から1年間の記事一覧

『金色の魔術師』 横溝正史 ポプラポケット文庫

●『金色の魔術師』 横溝正史 ポプラポケット文庫 読了。 かつて、この作品とハーマン・ランドン「灰色の魔術師」との関連を指摘した某ブログを面白く読んだことを思い出す。だがそれ以外の部分は、要するにまぎれもないジュブナイルで、どうということもない…

杉本一文『装』画集

●午前中は野暮用。●いったん帰宅して車を置き、電車に乗って東京に出る。杉本一文画伯の個展を見学し、待望久しい画集を買うのだ。六本木の会場では、たっぷりとしたスペースに大量の原画が展示されており、眼福である。初日だから、当然画伯ご本人がいらっ…

鮮血の乳房

●横溝関連プロジェクト「人形佐七映画のシナリオを読む」の第四回は、新東宝で昭和三十四年に作られた「鮮血の乳房」と、原作の「やまぶき薬師」とを読むことにする。 まずは原作の「やまぶき薬師」を読む。今回手に取ったのは、昭和二十八年に同光社から出…

『鉄路のオベリスト』 C・D・キング 論創社

●『鉄路のオベリスト』 C・D・キング 論創社 読了。 心理学と経済学とに関わる議論が何度も繰り返される。その部分の意味がさっぱり理解できず、目が文字の上を滑ってゆくばかり。作者はなぜこんな事を長々と書いたのか、不思議な作品である。もともとが心…

小酒井不木探偵小説選

●書店に寄って本を買う。『小酒井不木探偵小説選II』 論創社また論創社の本を買ってしまった。

『よしきた、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会

●『よしきた、ジーヴス』 P・G・ウッドハウス 国書刊行会 読了。 前回読んだ『比類なきジーヴス』は、短編をつなぎ合わせて長編に仕立てたもので、似たようなエピソードの繰り返しがちと退屈であった。だが今回の長編は違う。人間関係の厄介な問題がいくつ…

『毒の矢』 横溝正史 角川文庫

●明日は仕事なので、今日は観光なしでさっさと切り上げる。早朝の名鉄で名古屋に向かい、八時半の新幹線に乗る。車内で読み残していた『毒の矢』 横溝正史 角川文庫 を読了。ストーリーは原型版ほぼそのままで、伏線や心理描写が書き加えられることで完成度…

簡単なお仕事

●朝から電車に乗って街に出る。電車の中で「扉の中の女」を読み、『金田一耕助の帰還』に収録されている「~の中の女」シリーズ三編を読み終えた。三編ともに、あれっと思うほどあっけない。ショートショートか探偵クイズのような読み味である。金田一耕助が…

神の毒の当たり矢

●光文社文庫の『金田一耕助の帰還』から「毒の矢」を読む。平日は朝しか読めないので、八十ページのこの作品に二日かかってしまった。読んでなるほど。中傷の手紙で金品を要求し、樹の根元に埋めておくよう指示する辺りが「神の矢」で、事件の中心となる趣向…

関係ない「当たり矢」

●春陽文庫の佐七シリーズ『梅若水揚帳』から「当たり矢」を読む。ええーっ、「神の矢」と全然関係ない話やん。まあ内容としてはいかにもミステリらしい趣向があって面白かったけれど。これと「毒の矢」がどうつながるのか、そして「神の矢」と「毒の矢」がど…

二つの「神の矢」

●朝のドトールで「むつび」版の「神の矢」を読んだ。中央線のC駅から二里ばかり、高原の温泉場で巻き起こる「一種不可思議な、得体の知れぬ妙に薄気味悪い事件」……のオープニングである。なにしろ連載一回だけなのだから、物語が動き出す間もない。登場人物…

『サム・ホーソーンの事件簿I』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『サム・ホーソーンの事件簿I』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。いくつかコメント。「呪われた野外音楽堂の謎」驚くほど多くの伏線が散りばめられていて、収録作品中のベスト。「乗務員車の謎」夜行列車での旅の様子が楽しい。「そびえ立つ尖塔の謎」…

載ってそう

●論創海外ミステリの『鉄路のオベリスト』から、付録として収録されている四短編を読む。以前、扶桑社文庫の『翳ある墓標』で読んだ作品の再読。四編とも、いかにもパルプ雑誌に載ってそうな小説で、なかなか楽しい。その、載ってそうってのは、ぼんやりとし…

中断

●今日から読み始めた国内ミステリが、あまりにも不愉快である。扱われている題材が、実にもう、馬鹿げていて、くだらなくて、おぞましくて、醜い。もう読みたくない。ミステリの質とは関係ない部分で、ページをめくることができなくなってしまった。こいつは…

『代診医の死』 J・ロード 論創社

●『代診医の死』 J・ロード 論創社 読了。 これはなかなかの秀作。事件の捜査とそれに伴うディスカッション以外の要素がほとんどない。奇怪な不可能犯罪もないし、犯人の悪意が伝わってくるようなスリリングな展開もない。読者の嗜好によっては退屈に思える…

『殺しのディナーにご招待』 E・C・R・ロラック 論創社

●『殺しのディナーにご招待』 E・C・R・ロラック 論創社 読了。 捜査関係者のみならず、登場人物の多くが事件についてディスカッションを繰り返す様子が楽しい。ただしそこで語られる内容は手がかりに基づいた推理ではなく、確たる根拠のない推測が多いの…

素性を明かさぬ死

●書店に寄って本を買う。『素性を明かさぬ死』 M・バートン 論創社『ピカデリーパズル』 F・ヒューム 論創社相変わらず、買うのは論創社の本が多い。そして近いうちに、論創ミステリ叢書の小酒井不木も買う予定。

『大暴れ若旦那』 三橋一夫 春陽文庫

●『大暴れ若旦那』 三橋一夫 春陽文庫 読了。 初めて読むタイプの小説である。こういうのを「明朗小説」というのだろうか。主人公は天婦羅屋の若旦那。しっかりしていて気配りもできて、明朗で前向きで、礼儀と信頼とを重んじ、子供にも懐かれ、「気は優しく…

用事を片付ける

●今日はいろいろ用事を片付けることにする。●隣の市にある「街の古本屋」に、久しぶりに本を売りに行く。文庫単行本取り混ぜて、ダンボールひと箱で二千五百円也。上出来である。●ちょっと離れた場所のブックオフを久しぶりに覗き、角川スニーカー文庫版の横…

『ソニア・ウェイワードの帰還』 M・イネス 論創社

●『ソニア・ウェイワードの帰還』 M・イネス 論創社 読了。 主人公の造形が面白い。自意識でぱんぱんに膨らんで、張り裂けそうになっている。俺様は上流階級に属し、知識も教養もあって、合理的で冷静で、困難な問題にも臆せず適切に対応できるだけの、勇気…

『エラリー・クイーンの事件簿2』 E・クイーン 創元推理文庫

●『エラリー・クイーンの事件簿2』 E・クイーン 創元推理文庫 読了。「<生き残りクラブ>の冒険」 シナリオ版は論創海外で既読。だが、犯人とメインのネタ以外の詳細は当然のように忘れているので、多少なりとも新鮮な気分で読めた。(伏字)であるかどうか…

今月の総括

●今月の総括。買った本:十冊読んだ本:十一冊論創海外を読むのが新刊に追いつくまでには、もう少々時間がかかる。だが、あと一歩ではある。すぐ向こうに先頭が見えてきている。

奇想天外

●書店に寄って本を買う。『奇想天外 [21世紀版] アンソロジー』 南雲堂『奇想天外 [復刻版] アンソロジー』 南雲堂●来月のイベントに参加申し込みをして、参加費を振り込んだ。昨日ズッコケたイベントの、第二回である。今度こそ、無事に参加したいも…

イベント欠席

●来月のイベントで使う予定の小道具作りに、ようやく手を付けた。始める前はあんなに面倒くさかったのだが、意を決して取り掛かってみると、案外スムーズに作業が進んだ。現在、大体の形ができるところまで。スプレーによる着色は、台風が来ているようなこん…

シナリオ「悪魔の手毬唄」

●映画「悪魔の手毬唄」のシナリオを読むことにする。『'77 年鑑代表シナリオ集』 シナリオ作家協会編 ダヴィッド社 に収録されている。せっかくだから、映画のDVDを流しながら同時並行で読んでいこうと思う。そうすれば、シナリオと完成映像との違いが…

『ラスキン・テラスの亡霊』 H・カーマイケル 論創社

●『ラスキン・テラスの亡霊』 H・カーマイケル 論創社 読了。 誰からも憎まれていたという被害者エスター・ペインの、その嫌らしさがあまり実感として迫ってこないのはどうしたわけか。それはたぶん、彼女の言動が直接描かれることがほとんどなく、他人が彼…

クライド殺害事件

●依頼していた、ヴァン・ダイン「クライド殺害事件」のコピーが届いた。わずか七ページの小品ながら、ファイロ・ヴァンスもマーカムもヒースも登場する。今は別の本を読んでいるので、こっちを読むのは後回し。●今のスマホは、四年近く使っている。特に不自…

裸姫と謎の熊男

●横溝関連プロジェクト「人形佐七映画のシナリオを読む」の第三回は、新東宝で昭和三十四年に作られた「裸姫と謎の熊男」と、原作の「雪女郎」とを読むことにする。●まずは原作を読む。今回手に取ったのは、昭和二十二年に杉山書店から出た『人形佐七捕物文…

『クライム・マシン』 J・リッチー 晶文社

●『クライム・マシン』 J・リッチー 晶文社 読了。 素晴らしい。短編集の褒め方で「粒揃い」というのがあるが、これほどまでに高い水準で粒が揃っているのは珍しい。個人的年内ベストテンに間違いなく入る傑作。 どの作品も良いが、あえて一作選ぶなら「旅…

『市川崑『悪魔の手毬唄』完全資料集成』 別冊映画秘宝編集部編 洋泉社

●午前中は野暮用。午後から読書。●『市川崑『悪魔の手毬唄』完全資料集成』 別冊映画秘宝編集部編 洋泉社 読了。 あの名作映画に関して実に様々な新情報が得られて、なかなかの読み応えであった。新情報の詳細はここには書かないけど、例外として一点だけ。…